67 / 142
吸血族の城
16
しおりを挟む
穏花が美汪の台詞に、幾分か緊張が和らいだ表情を見せた時、扉をノックする音が聞こえた。
美汪が「どうぞ」と返事をすると、その扉を開いたコーエンがティーワゴンを押しながら中に入って来た。
「そろそろ頃合いかと思いまして」
「ああ、ちょうど今終わったところだよ」
コーエンは美汪と穏花の側に黄金色のワゴンを運ぶと、覆い被さっていた白いレース調の布を取り払った。
すると、そこに現れた品の数々に、穏花は病のことも忘れて目を輝かせた。
「う、わ、わあああ~っ!!」
半透明の砂糖らしきものがかかった大きなドーナツ状の洋菓子に、金箔で飾られたダークチョコレートにコーティングされたホールケーキ。藍色の小花柄が描かれたポットに、それと揃いのティーカップ、ソーサー。
貴婦人の茶会のような優雅なおもてなしと、何よりも美味しそうに鎮座するスウィーツたちに穏花は感激の声を上げていた。
「喜んでいただけたようでよかったです。……美汪ぼっちゃま、例の件を話しても?」
「かまわない。……ただ、余計なことは言わないように、僕個人のこととか、ね」
「かしこまりました。言いませんよ……余計なことは、ね」
「あ……でもこれ、美汪は食べられないのに、私だけ食べるなんて、悪いような……」
見当違いの気遣いをしている穏花に、美汪は腕を組むと小さく息をついた。
「ぜひたくさん食べて血液量を増やしてくれ。僕の貴重な食糧なんだからね」
「え? ……あ、あっ、そっか! なるほど。よーし、じゃあいっぱい食べるぞー!」
この場には不相応な明るい声音が響いた。
美汪が「どうぞ」と返事をすると、その扉を開いたコーエンがティーワゴンを押しながら中に入って来た。
「そろそろ頃合いかと思いまして」
「ああ、ちょうど今終わったところだよ」
コーエンは美汪と穏花の側に黄金色のワゴンを運ぶと、覆い被さっていた白いレース調の布を取り払った。
すると、そこに現れた品の数々に、穏花は病のことも忘れて目を輝かせた。
「う、わ、わあああ~っ!!」
半透明の砂糖らしきものがかかった大きなドーナツ状の洋菓子に、金箔で飾られたダークチョコレートにコーティングされたホールケーキ。藍色の小花柄が描かれたポットに、それと揃いのティーカップ、ソーサー。
貴婦人の茶会のような優雅なおもてなしと、何よりも美味しそうに鎮座するスウィーツたちに穏花は感激の声を上げていた。
「喜んでいただけたようでよかったです。……美汪ぼっちゃま、例の件を話しても?」
「かまわない。……ただ、余計なことは言わないように、僕個人のこととか、ね」
「かしこまりました。言いませんよ……余計なことは、ね」
「あ……でもこれ、美汪は食べられないのに、私だけ食べるなんて、悪いような……」
見当違いの気遣いをしている穏花に、美汪は腕を組むと小さく息をついた。
「ぜひたくさん食べて血液量を増やしてくれ。僕の貴重な食糧なんだからね」
「え? ……あ、あっ、そっか! なるほど。よーし、じゃあいっぱい食べるぞー!」
この場には不相応な明るい声音が響いた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蛇に祈りを捧げたら。
碧野葉菜
キャラ文芸
願いを一つ叶える代わりに人間の寿命をいただきながら生きている神と呼ばれる存在たち。その一人の蛇神、蛇珀(じゃはく)は大の人間嫌いで毎度必要以上に寿命を取り立てていた。今日も標的を決め人間界に降り立つ蛇珀だったが、今回の相手はいつもと少し違っていて…?
神と人との理に抗いながら求め合う二人の行く末は?
人間嫌いであった蛇神が一人の少女に恋をし、上流神(じょうりゅうしん)となるまでの物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる