薔薇の耽血（バラのたんけつ）

吸血族の城

12

「ぼっちゃまのお客様です。心配しなくても大丈夫ですよ、あなた方は下がっていてください」

　コーエンに言われると、彼らは互いに顔を見合わせた後、幾分か安心したように静かに扉を閉めた。

「ぼっちゃまに助けられた混血たちです。人目に触れる場に出てはまた捕まる可能性があるので、この城で身を寄せながら暮らしています」
「そう……なんですね」
「皆ぼっちゃまを尊敬し、信頼しておりますので、そのぼっちゃまが連れて来られたあなた様に危害を加えるようなことは決して考えませんので、ご安心を。ああ、ちなみに私は唯一、あなた様と同じ純血の人間ですよ」
「そうなんですか！？」
「ええ。ぼっちゃまがお待ちです、あちらへ」

　コーエンは軽く頭を下げながら、右手で穏花が進むべき道を提示した。

「あなた様に必要な儀式をご用意しております」
「ぎ、しき……？」
「恐ろしいことは何もありません。終わりましたら甘いお菓子をお持ちいたしましょう」
「えっ？　ほ、本当ですか？」
「ケーキはお好きでしょうか？」
「はい、とっても！」
「元気なよいお返事です。では、お話は後ほど……」

　穏花は促すコーエンに一礼すると、足早に美汪が入って行った部屋へと向かった。