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吸血族の城
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「こっ、こんなもの、い、いつから? な、なかったよね?」
「そのまま建ってたら大変な騒ぎになるでしょ……王域で僕が許可した者にしか見えないし入れないようになってるんだよ」
「おう、いき……?」
「簡単に言えば僕が作り出す別空間のことだよ。王域の範囲内なら一瞬で移動することもできるし、どんな奴がいるかも感知できる……例えば、僕を尾行しようとしたおバカさんなんかも、ね」
「はぅ……」
苦々しい口ぶりで黒歴史を掘り出され、穏花は肩をすぼめた。
「王域……っていうのを使えるのが、美汪だけなの?」
「ああ、吸血族の王位継承者にのみ与えられる力だからね」
「じゃあ、美汪は王様、なの……?」
「……そういう陳腐な言い方は控えてくれる。あまり好きじゃない」
美汪、という名は水も滴る美しき王、という意味でつけられたが、本人は名前負けも甚だしいと思っていた。
「そ、そっか! ごめ――わかった」
穏花は途中、言い直した。
謝罪の言葉は無闇に使うと軽くなり、意味をなさなくなるよ、と以前美汪に言われており、穏花もその通りだと思っていたからだ。
美汪は巨城の門前に立ち止まると、穏花を振り返り告げた。
「ようこそ我が城へ……棘のお姫様」
理解できないことは数えきれなかったが、穏花が美汪について行くことに躊躇はなかった。
「そのまま建ってたら大変な騒ぎになるでしょ……王域で僕が許可した者にしか見えないし入れないようになってるんだよ」
「おう、いき……?」
「簡単に言えば僕が作り出す別空間のことだよ。王域の範囲内なら一瞬で移動することもできるし、どんな奴がいるかも感知できる……例えば、僕を尾行しようとしたおバカさんなんかも、ね」
「はぅ……」
苦々しい口ぶりで黒歴史を掘り出され、穏花は肩をすぼめた。
「王域……っていうのを使えるのが、美汪だけなの?」
「ああ、吸血族の王位継承者にのみ与えられる力だからね」
「じゃあ、美汪は王様、なの……?」
「……そういう陳腐な言い方は控えてくれる。あまり好きじゃない」
美汪、という名は水も滴る美しき王、という意味でつけられたが、本人は名前負けも甚だしいと思っていた。
「そ、そっか! ごめ――わかった」
穏花は途中、言い直した。
謝罪の言葉は無闇に使うと軽くなり、意味をなさなくなるよ、と以前美汪に言われており、穏花もその通りだと思っていたからだ。
美汪は巨城の門前に立ち止まると、穏花を振り返り告げた。
「ようこそ我が城へ……棘のお姫様」
理解できないことは数えきれなかったが、穏花が美汪について行くことに躊躇はなかった。
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