薔薇の耽血（バラのたんけつ）

秘密

27

「……俺はさ、泣いたり笑ったりできるなら、人間かなって思ってる」

　みちるは、どこか遠くを眺めたような圭太の横顔を一瞥すると、少し嘲たように、しかし何か吹っ切れたように笑ってみせた。

「あ、今バカにしただろ！　どうせ俺はみちる様に比べてお勉強もできませんからねー」
「してないわよ。圭太らしくていいんじゃないって思っただけ。あまり考え込みすぎると、心が迷子になってしまうもの。本当に大切な答えは、案外とても単純なのかもしれない……」

　どこか清々しさを感じさせるみちるの横顔はいつもに増して大人びて、素直に綺麗だと圭太は思った。
　叶わない想いを抱えていたのはみちるだけではなかった。
　圭太はよく穏花をかまっていたが、その穏花の側にはいつもみちるがいたのだ。

「みちる、俺もさ……泣いたり笑ったりできるんだよ」
「……今更何言ってるの？　当たり前でしょ、圭太は人間なんだから」

　怪訝そうに言葉を返すみちるに、圭太はただ苦笑いを浮かべ、決して頷くことはなかった――。