上 下
46 / 142
秘密

26

しおりを挟む
「人でなし、ってなんだろうな」

 みちるの言葉を拾った圭太が、自問するかのように呟いた。
 圭太自身も以前美汪について「本当に人間なのかね」と言ったことを思い出していた。

「人間の定義ってなんなんだろうな」
「……何、いきなり。哲学でも語る気? らしくもない」
「そんなんじゃねえけどさ、なんとなく思っただけ」

 みちるはやや視線を落とし、数秒した後また口を開いた。

「言葉が話せること、かしら? 会話が成立するからお互いを知ることができるわけだし、もし牛や豚が私たちと同じように言語が使えたなら、今みたいに平気で食べたりはできないはずよ」
「じゃあ外国人なら? 何言ってるか全然わからねえよな」
「……ならやっぱり見た目かしら?」
「二足歩行で二本腕があって頭がついてて」
「でもそれだと、手足や身体の一部が欠損したら?」
「だよなあ、考えれば考えるほどわかんなくなるよな」

 圭太は両腕を大きく伸ばし、みちるは腕を組みながら、天井を見上げた。

「じゃあ気持ちの問題かね? 誰かを思いやる優しさとか」
「……誰かを貶めたり殺したりする残虐な事件なんかは、まさに人間しかしでかさない所業だけどね」
「うーん、それじゃ残酷であればあるほど人間らしいってことになっちまうよなあ」

 二人は押し問答を繰り返しているように見えたが、圭太の中ではとっくに答えが出ていたようだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜
キャラ文芸
願いを一つ叶える代わりに人間の寿命をいただきながら生きている神と呼ばれる存在たち。その一人の蛇神、蛇珀(じゃはく)は大の人間嫌いで毎度必要以上に寿命を取り立てていた。今日も標的を決め人間界に降り立つ蛇珀だったが、今回の相手はいつもと少し違っていて…? 神と人との理に抗いながら求め合う二人の行く末は? 人間嫌いであった蛇神が一人の少女に恋をし、上流神(じょうりゅうしん)となるまでの物語。

管理機関プロメテウス広報室の事件簿

石動なつめ
キャラ文芸
吸血鬼と人間が共存する世界――という建前で、実際には吸血鬼が人間を支配する世の中。 これは吸血鬼嫌いの人間の少女と、どうしようもなくこじらせた人間嫌いの吸血鬼が、何とも不安定な平穏を守るために暗躍したりしなかったりするお話。 小説家になろう様、ノベルアップ+様にも掲載しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

狐娘は記憶に残らない

宮野灯
キャラ文芸
地方に引っ越した高校生の元へ、半分狐の女の子が助けを求めてやってくる。 「私……山道で、不気味な光を見たんですっ」 涙目でそう訴えてきた彼女を、彼は放っておくことができなかった。 『狐火』に『幽霊店舗』に『影人間』に『存在しないはずの、四百十九人目の高校生』―― じわりじわりと日常に侵食してくる、噂や都市伝説。 それらは、解くことができる謎か、マジの怪談か。 高校の幼なじみたちが挑む、ライトなホラーミステリー。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

上杉山御剣は躊躇しない

阿弥陀乃トンマージ
キャラ文芸
 【第11回ネット小説大賞 一次選考通過作品】  新潟県は長岡市に住む青年、鬼ヶ島勇次はとある理由から妖を絶やす為の組織、妖絶講への入隊を志願する。  人の言葉を自由に操る不思議な黒猫に導かれるまま、山の中を進んでいく勇次。そこで黒猫から勇次に告げられたのはあまりにも衝撃的な事実だった!  勇次は凄腕の女剣士であり妖絶士である上杉山御剣ら個性の塊でしかない仲間たちとともに、妖退治の任務に臨む。  無双かつ爽快で華麗な息もつかせぬ剣戟アクション活劇、ここに開幕!  ※第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。

G.F. -ゴールドフイッシュ-

木乃伊(元 ISAM-t)
キャラ文芸
※表紙画アイコンは『アイコンメーカー CHART』と『画像加工アプリ perfect image』を使用し製作しました。 ❶この作品は『女装と復讐は街の華』の続編です。そのため開始ページは《page.480》からとなっています。 ❷15万文字を超えましたので【長編】と変更しました。それと、未だどれだけの長さのストーリーとなるかは分かりません。 ❸ストーリーは前作と同様に《岩塚信吾の視点》で進行していきますが、続編となる今作品では《岡本詩織の視点》や《他の登場人物の視点》で進行する場面もあります。 ❹今作品中で語られる《芸能界の全容》や《アイドルと女優との比較など》等は全てフィクション(および業界仮想)です。現実の芸能界とは比較できません。 ❺毎日1page以上の執筆と公開を心掛けますが、執筆や公開できない日もあるかもしれませんが、宜しくお願い致します。※ただ今、作者の生活環境等の事由により、週末に纏めて執筆&公開に努めています。

処理中です...