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秘密
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「人でなし、ってなんだろうな」
みちるの言葉を拾った圭太が、自問するかのように呟いた。
圭太自身も以前美汪について「本当に人間なのかね」と言ったことを思い出していた。
「人間の定義ってなんなんだろうな」
「……何、いきなり。哲学でも語る気? らしくもない」
「そんなんじゃねえけどさ、なんとなく思っただけ」
みちるはやや視線を落とし、数秒した後また口を開いた。
「言葉が話せること、かしら? 会話が成立するからお互いを知ることができるわけだし、もし牛や豚が私たちと同じように言語が使えたなら、今みたいに平気で食べたりはできないはずよ」
「じゃあ外国人なら? 何言ってるか全然わからねえよな」
「……ならやっぱり見た目かしら?」
「二足歩行で二本腕があって頭がついてて」
「でもそれだと、手足や身体の一部が欠損したら?」
「だよなあ、考えれば考えるほどわかんなくなるよな」
圭太は両腕を大きく伸ばし、みちるは腕を組みながら、天井を見上げた。
「じゃあ気持ちの問題かね? 誰かを思いやる優しさとか」
「……誰かを貶めたり殺したりする残虐な事件なんかは、まさに人間しかしでかさない所業だけどね」
「うーん、それじゃ残酷であればあるほど人間らしいってことになっちまうよなあ」
二人は押し問答を繰り返しているように見えたが、圭太の中ではとっくに答えが出ていたようだった。
みちるの言葉を拾った圭太が、自問するかのように呟いた。
圭太自身も以前美汪について「本当に人間なのかね」と言ったことを思い出していた。
「人間の定義ってなんなんだろうな」
「……何、いきなり。哲学でも語る気? らしくもない」
「そんなんじゃねえけどさ、なんとなく思っただけ」
みちるはやや視線を落とし、数秒した後また口を開いた。
「言葉が話せること、かしら? 会話が成立するからお互いを知ることができるわけだし、もし牛や豚が私たちと同じように言語が使えたなら、今みたいに平気で食べたりはできないはずよ」
「じゃあ外国人なら? 何言ってるか全然わからねえよな」
「……ならやっぱり見た目かしら?」
「二足歩行で二本腕があって頭がついてて」
「でもそれだと、手足や身体の一部が欠損したら?」
「だよなあ、考えれば考えるほどわかんなくなるよな」
圭太は両腕を大きく伸ばし、みちるは腕を組みながら、天井を見上げた。
「じゃあ気持ちの問題かね? 誰かを思いやる優しさとか」
「……誰かを貶めたり殺したりする残虐な事件なんかは、まさに人間しかしでかさない所業だけどね」
「うーん、それじゃ残酷であればあるほど人間らしいってことになっちまうよなあ」
二人は押し問答を繰り返しているように見えたが、圭太の中ではとっくに答えが出ていたようだった。
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