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秘密
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穏花は、こんなに至近距離で異性と見つめ合ったことがない。
その初めての相手がこれほど秀麗な顔立ちをしていたら、嫌でも意識してしまう。
昨日、自身に強烈な痛みを与えた異種族であることを忘れたわけではないのに、穏花の脈は早くなる。
怯えるように、恥じらうように、目を泳がせながら頬を染める穏花を前にした美汪は、まただ――と思う。
身体の底から言いようのない滾りが湧き上がり、脳天を突き抜ける。それは例えるなら、自分の中に眠る魔物が目覚めるかのような衝動だった。
「イッ……!!」
次の瞬間、穏花は悲痛な声を上げていた。
怒涛の勢いで立ち上がった美汪に、後頭部の髪を引っ張られたからだ。
焦茶の柔らかな毛髪が根こそぎ抜けてしまうのではないかと危惧するほどの痛み。美汪は力任せに穏花の髪を引き、ホワイトボードの壁へと押しつけた。
穏花が何が起きたのか悟った時には、美汪はすでに吸血族本来の姿に変貌を遂げていた。
真紅の瞳に、成長した左右の牙。普段は顔色一つ変えない彼が、目を見開き、息を乱す。
「……痛いか?」
それでも品のある口調は崩れない。
穏花は美汪が嘘が嫌いだと言っていたことを思い出し、涙ながらに訴える。髪を掴まれているせいで、頷くことすら許されない。
「い……た、い……痛い……」
「なら、お願いしなよ、今日言ったことをよぉく踏まえてね」
穏花は必死に美汪との会話を記憶の限り探った。
“敬語を使わない”、“敬称をつけない”……。
その初めての相手がこれほど秀麗な顔立ちをしていたら、嫌でも意識してしまう。
昨日、自身に強烈な痛みを与えた異種族であることを忘れたわけではないのに、穏花の脈は早くなる。
怯えるように、恥じらうように、目を泳がせながら頬を染める穏花を前にした美汪は、まただ――と思う。
身体の底から言いようのない滾りが湧き上がり、脳天を突き抜ける。それは例えるなら、自分の中に眠る魔物が目覚めるかのような衝動だった。
「イッ……!!」
次の瞬間、穏花は悲痛な声を上げていた。
怒涛の勢いで立ち上がった美汪に、後頭部の髪を引っ張られたからだ。
焦茶の柔らかな毛髪が根こそぎ抜けてしまうのではないかと危惧するほどの痛み。美汪は力任せに穏花の髪を引き、ホワイトボードの壁へと押しつけた。
穏花が何が起きたのか悟った時には、美汪はすでに吸血族本来の姿に変貌を遂げていた。
真紅の瞳に、成長した左右の牙。普段は顔色一つ変えない彼が、目を見開き、息を乱す。
「……痛いか?」
それでも品のある口調は崩れない。
穏花は美汪が嘘が嫌いだと言っていたことを思い出し、涙ながらに訴える。髪を掴まれているせいで、頷くことすら許されない。
「い……た、い……痛い……」
「なら、お願いしなよ、今日言ったことをよぉく踏まえてね」
穏花は必死に美汪との会話を記憶の限り探った。
“敬語を使わない”、“敬称をつけない”……。
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