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秘密

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「……で、あれからどうなの? 棘病は」
「どう、って?」
「進行具合はどうなのって意味だよ。本当に君は頭が足りないね」
「あ、そうだよね! ごめんね」
「……頭が足りないとは言ったけど、それを悪いとは一言も言ってないよね? 勝手な被害妄想はよしなよ、謝るとこでもない」
「う? うん」

 美汪の言い回しは単純な穏花にとってはわかり辛い。
 とりあえず叱られたわけではなさそうだと胸を撫で下ろした穏花は、棘病について話すことにした。

「今日は、さっき小さくて白い花弁を一枚、吐いただけ。昨日は朝昼夕方と吐いたんだけど……美汪に血を吸ってもらってから、ずいぶんマシになったみたい」
「……そう。やはり吸血族が血を吸うと、棘病の進行を食い止めることができるのは確かか」

 美汪はしなやかに骨張った人差し指を唇に当て、思案するように独り言を呟いていた。

「美汪と……吸血族? と、棘病は、何か関係があるの?」
「……さあね」

 美汪は冷ややかに受け流すと、腕を下ろし穏花に軽く顎を上に動かして見せた。

「そんなに離れていたら血を吸えないんだけど」

 顎で誘われ、穏花はようやく出入り口付近から離れると、美汪の側まで歩いた。

 昨日は考える隙すら与えられず、訳もわからぬまま吸血され気を失い、終わったが――今は静かな時が流れている。
 椅子に座ったままの美汪を立っている穏花がやや見下ろす形になると、当然美汪は穏花を見上げるようになるわけだが。
 その透明感の強い黒の瞳は、まるで宝石のように神秘的だった。
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