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秘密
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右側から肌を刺すような視線を感じると、穏花から先ほどまでの笑顔が消え失せた。
美汪が、立ち止まり穏花を見ていた。
「……なんだよ、黒川」
それに気づいた圭太が喧嘩を売るかのような強い口調で言葉を投げかけたが、美汪は一瞥しただけで無言のまま席に着いた。
「相変わらず冷たそうな奴、本当に人間なのかね」
圭太の吸血族を連想させるような台詞に穏花の方がハラハラしてしまう。
しかし、当の美汪は圭太を気にする素振りすらない。その堂々とした姿に、穏花は羨ましいような、関心するような、不思議な気持ちになった。
予鈴が鳴り、ホームルームを終え、一限目が始まる直前だった。
穏花が学校指定の鞄に入れていたスマートフォンが震えた。
――バイブ切るの忘れてた、こんな朝から誰だろう? 叔母さんかな?
穏花はそう考えながら次の授業の用意をしつつ、席に座ったままスマートフォンに手を伸ばした。
そして、通話アプリに入ったメッセージを開き、愕然とする。
『放課後、視聴覚室』
名前はなかったが、その代わりに紅い薔薇の画像が載せられていた。
それは送り主が誰であるか、認識するには十分であった。
なぜ、穏花の通話アプリの連絡先を知っているのか?
そんなことは美汪に血を吸われ、気絶していた隙にスマートフォンを弄れば造作もないことだった。
穏花は鍵をかけていなかったが、恐らくそんなものは、例えしていたとしても美汪には無意味に思えた。
穏花は悲壮な顔つきで、ゆっくりと首だけを斜め後ろに動かした。
すると、待ち構えていたかのような美汪の瞳とかち合った。
拒否権など、穏花にはなかった。
美汪が、立ち止まり穏花を見ていた。
「……なんだよ、黒川」
それに気づいた圭太が喧嘩を売るかのような強い口調で言葉を投げかけたが、美汪は一瞥しただけで無言のまま席に着いた。
「相変わらず冷たそうな奴、本当に人間なのかね」
圭太の吸血族を連想させるような台詞に穏花の方がハラハラしてしまう。
しかし、当の美汪は圭太を気にする素振りすらない。その堂々とした姿に、穏花は羨ましいような、関心するような、不思議な気持ちになった。
予鈴が鳴り、ホームルームを終え、一限目が始まる直前だった。
穏花が学校指定の鞄に入れていたスマートフォンが震えた。
――バイブ切るの忘れてた、こんな朝から誰だろう? 叔母さんかな?
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そして、通話アプリに入ったメッセージを開き、愕然とする。
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それは送り主が誰であるか、認識するには十分であった。
なぜ、穏花の通話アプリの連絡先を知っているのか?
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穏花は鍵をかけていなかったが、恐らくそんなものは、例えしていたとしても美汪には無意味に思えた。
穏花は悲壮な顔つきで、ゆっくりと首だけを斜め後ろに動かした。
すると、待ち構えていたかのような美汪の瞳とかち合った。
拒否権など、穏花にはなかった。
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