薔薇の耽血(バラのたんけつ)

碧野葉菜

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秘密

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 しばし茫然と立ち尽くしていた二人だったが、やがてみちるが全身を震えさせたと同時に悲鳴を上げた。
 みちるは穏花の手を握りしめ、一目散にその場から走り、逃げた。

 ようやくブナの林から抜け出すと、コンクリートで舗装された道に出る。
 少ないが街灯もある、やや明るく開けた場所に出て、穏花とみちるは息も絶え絶え地面に崩れるように座り込んだ。

「……今の……見た……?」
「う……う、ん」
「確かに……目、みたいだった……横に並んで、小さな動物か鳥が、私たちを見てるみたいだったわ……変よ、あそこ……絶対、普通じゃない……!」

 何かに取り憑かれたように言葉を並べるみちるを前に、穏花は妙に冷静であった。

 それは、美汪の件があったからだろう。
 不治の病を患い、自分たちと同じ人間だと信じて疑わなかったクラスメイトが吸血族であり、そしてその相手の変身を目の当たりにした上、強烈な痛みとともに血を吸われた穏花にしてみれば、先ほどの小さな紫の目など驚きはしたものの、驚愕には値しなかったのだ。

「……みっちゃん、今日あったことは、誰にも内緒だよ……約束ね」

 穏花の言葉に、みちるは戸惑いながらもしかと頷いた。

 しかし、この秘密はみちるに対するものではない。
 穏花と美汪、二人だけの、そして美汪のための、忠実な秘密であった。
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