24 / 142
秘密
4
しおりを挟む
しばし茫然と立ち尽くしていた二人だったが、やがてみちるが全身を震えさせたと同時に悲鳴を上げた。
みちるは穏花の手を握りしめ、一目散にその場から走り、逃げた。
ようやくブナの林から抜け出すと、コンクリートで舗装された道に出る。
少ないが街灯もある、やや明るく開けた場所に出て、穏花とみちるは息も絶え絶え地面に崩れるように座り込んだ。
「……今の……見た……?」
「う……う、ん」
「確かに……目、みたいだった……横に並んで、小さな動物か鳥が、私たちを見てるみたいだったわ……変よ、あそこ……絶対、普通じゃない……!」
何かに取り憑かれたように言葉を並べるみちるを前に、穏花は妙に冷静であった。
それは、美汪の件があったからだろう。
不治の病を患い、自分たちと同じ人間だと信じて疑わなかったクラスメイトが吸血族であり、そしてその相手の変身を目の当たりにした上、強烈な痛みとともに血を吸われた穏花にしてみれば、先ほどの小さな紫の目など驚きはしたものの、驚愕には値しなかったのだ。
「……みっちゃん、今日あったことは、誰にも内緒だよ……約束ね」
穏花の言葉に、みちるは戸惑いながらもしかと頷いた。
しかし、この秘密はみちるに対するものではない。
穏花と美汪、二人だけの、そして美汪のための、忠実な秘密であった。
みちるは穏花の手を握りしめ、一目散にその場から走り、逃げた。
ようやくブナの林から抜け出すと、コンクリートで舗装された道に出る。
少ないが街灯もある、やや明るく開けた場所に出て、穏花とみちるは息も絶え絶え地面に崩れるように座り込んだ。
「……今の……見た……?」
「う……う、ん」
「確かに……目、みたいだった……横に並んで、小さな動物か鳥が、私たちを見てるみたいだったわ……変よ、あそこ……絶対、普通じゃない……!」
何かに取り憑かれたように言葉を並べるみちるを前に、穏花は妙に冷静であった。
それは、美汪の件があったからだろう。
不治の病を患い、自分たちと同じ人間だと信じて疑わなかったクラスメイトが吸血族であり、そしてその相手の変身を目の当たりにした上、強烈な痛みとともに血を吸われた穏花にしてみれば、先ほどの小さな紫の目など驚きはしたものの、驚愕には値しなかったのだ。
「……みっちゃん、今日あったことは、誰にも内緒だよ……約束ね」
穏花の言葉に、みちるは戸惑いながらもしかと頷いた。
しかし、この秘密はみちるに対するものではない。
穏花と美汪、二人だけの、そして美汪のための、忠実な秘密であった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
鬼の閻火とおんぼろ喫茶
碧野葉菜
キャラ文芸
ほっこりじんわり大賞にて奨励賞を受賞しました!ありがとうございます♪
高校を卒業してすぐ、急逝した祖母の喫茶店を継いだ萌香(もか)。
気合いだけは十分だったが現実はそう甘くない。
奮闘すれど客足は遠のくばかりで毎日が空回り。
そんなある日突然現れた閻魔大王の閻火(えんび)に結婚を迫られる。
嘘をつけない鬼のさだめを利用し、萌香はある提案を持ちかける。
「おいしいと言わせることができたらこの話はなかったことに」
激辛採点の閻火に揉まれ、幼なじみの藍之介(あいのすけ)に癒され、周囲を巻き込みつつおばあちゃんが言い残した「大切なこと」を探す。
果たして萌香は約束の期限までに閻火に「おいしい」と言わせ喫茶店を守ることができるのだろうか?
ヒューマンドラマ要素強めのほっこりファンタジー風味なラブコメグルメ奮闘記。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる