上 下
21 / 142
秘密

1

しおりを挟む
「……ど、か……のど、か……」

 どこか遠くで自分の名を呼ぶ声がして、穏花は少しずつ瞼を持ち上げた。

「――穏花っ……!」

 穏花の目が開いたことに気がついたみちるは、食い入るように親友の顔を覗いた。
 穏花は視界が開けたはずなのに、辺りの暗さのせいでみちるの姿を認めるのがやっとだった。
 みちるがスマートフォンのライトで、穏花と自身を照らしていたのである。

「も、もう、驚いたわよ! 私が目が覚めたら、穏花が横で倒れてるんだもの! 揺さぶってもなかなか起きないし、もうこんな時間に……」

 穏花が気を失っている間、実に三時間が経過していた。
 時刻は午後七時を回り、秋空はすっかり黒墨の世界に染まっていた。

「一体、何があったの……!?」

 みちるに背を支えられながら座る形で身を起こした穏花は、彼女の質問で急激に頭が覚醒した。
 ――先ほどあったこと……
 思い出したくないが、一生忘れないであろう、あの異常な一幕が穏花のすべてを占領したのだ。
 それと同時に、穏花の首筋が痛みを持つ。
 まるで美汪が存在を主張するかのように。

「あ、う、うん、ちょっと、ね……、そ、それより、みっちゃんの方こそどうしたの? 急に倒れて、びっくりしたんだから……」
「私は、本当に何が起きたかわからなかったわ、今考えてみれば急に後頭部に痛みが走った気がしたけど……そこからは目の前が暗転して」
「そ、そうなんだね……」

 それを聞いた穏花は、間違いなく美汪がみちるの背後から意識を奪ったのだとわかった。
 ただならぬ速さで、音もなく、静かに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

猫の罪深い料理店~迷子さんの拠り所~

碧野葉菜
キャラ文芸
アラサー真っ只中の隅田川千鶴は仕事に生きるキャリアウーマン。課長に昇進しできない男たちを顎で使う日々を送っていた。そんなある日、仕事帰りに奇妙な光に気づいた千鶴は誘われるように料理店に入る。 しかしそこは、普通の店ではなかった――。 麗しの店主、はぐれものの猫宮と、それを取り囲む十二支たち。 彼らを通して触れる、人と人の繋がり。 母親との確執を経て、千鶴が選ぶ道は――。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...