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秘密

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「……ど、か……のど、か……」

 どこか遠くで自分の名を呼ぶ声がして、穏花は少しずつ瞼を持ち上げた。

「――穏花っ……!」

 穏花の目が開いたことに気がついたみちるは、食い入るように親友の顔を覗いた。
 穏花は視界が開けたはずなのに、辺りの暗さのせいでみちるの姿を認めるのがやっとだった。
 みちるがスマートフォンのライトで、穏花と自身を照らしていたのである。

「も、もう、驚いたわよ! 私が目が覚めたら、穏花が横で倒れてるんだもの! 揺さぶってもなかなか起きないし、もうこんな時間に……」

 穏花が気を失っている間、実に三時間が経過していた。
 時刻は午後七時を回り、秋空はすっかり黒墨の世界に染まっていた。

「一体、何があったの……!?」

 みちるに背を支えられながら座る形で身を起こした穏花は、彼女の質問で急激に頭が覚醒した。
 ――先ほどあったこと……
 思い出したくないが、一生忘れないであろう、あの異常な一幕が穏花のすべてを占領したのだ。
 それと同時に、穏花の首筋が痛みを持つ。
 まるで美汪が存在を主張するかのように。

「あ、う、うん、ちょっと、ね……、そ、それより、みっちゃんの方こそどうしたの? 急に倒れて、びっくりしたんだから……」
「私は、本当に何が起きたかわからなかったわ、今考えてみれば急に後頭部に痛みが走った気がしたけど……そこからは目の前が暗転して」
「そ、そうなんだね……」

 それを聞いた穏花は、間違いなく美汪がみちるの背後から意識を奪ったのだとわかった。
 ただならぬ速さで、音もなく、静かに。
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