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棘病

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 二人は後部車両でも最も端に当たるドアの前に立ち、進行方向とは逆を向いていた。
 一駅、二駅、三駅……と過ぎてゆく。
 扉が開く度、みちるは外にやや身を乗り出し降車する人々を確認する。
 乗車客が少ないため、車両が離れていても美汪が降りたか否かはすぐさま見て取れる。

「ずいぶん遠くまで行くのね……わざわざこんな遠い学校まで通うなんて、見られては困ることでもあるのかしら?」
「田舎だからうちの高校しかなかっただけなんじゃ」
「こっちの方向なら白神高校があるじゃない」
「そうだっけ? みっちゃんはよく覚えてるね」
「地元でしょうが、まったく――あ……!」

 話を切ったみちるの視線の先には、五駅目でホームに降りた美汪がいた。

 二人は静かにホームに降り立つと、改札を抜ける美汪の背中を認めてから顔を見合わせ頷き、急足で駅を後にした。

 小さく、手入れの行き届いていない古びた駅に降りたのは美汪と穏花たちだけだった。
 辺りには店はなく、しばらく田畑を挟んだまばらな民家が続いていたが、やがてそれも見えなくなると草木だけの景色となった。
 通行人もおらず、遮るものもなかったため、尾行にはあまりに不適切な環境であった。
 美汪に悟られないよう気を回しているうちに、いつの間にか彼の背中は豆粒のように小さくなってしまった。

 そして、真っ直ぐの道を歩いていた美汪が、ついに左へと曲がったのだ。
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