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棘病

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「病院には行っちゃダメってことかな?」
「どうせ行っても治らない、以外に何か意味がありそうね。ここだけヴァンパイアや吸血鬼のことを“吸血族”って書いてるし、他の記事とは違うのよ。試してみる価値があると思わない?」
「え、ええ……!? た、試すって、吸血鬼? か何かに、血を吸ってもらうってこと? それってすごく痛いんじゃ……」

 黒づくめの大男に食いつかれている場面を想像してしまった穏花は、真っ青な顔で首を横に振った。

「何言ってるのよ! 死ぬことに比べたら首を咬まれるくらい平気でしょ!? ……あくまでイメージだけど」
「で、でも、そもそもそんな生き物が本当にいるのかなぁ? 作り話の世界なんじゃ……? もし本当にいたとしても、見たことないからどんな姿をしてるとか、わからないし……」
「この記事の続き、まだ興味深いことが書かれてあるのよ」

 みちるの細い人差し指で下にスクロールされていく画面を、穏花は半信半疑で追っていた。

「吸血族は純血と混血がいる……混血は見分けがつきにくく人間と同じような生活が可能……純血は……人間と同じ食事を取ることが難しく、日光を長時間浴びることは命に関わる……」

 みちるは黒い明朝体の文字を読み上げながら、あることに思い当たった。
 それは進めていくほどに明確さを増した。

「ねえ……これって、あの人のことみたいじゃない?」
「え?」
「黒川君よ」

 予想だにしていなかった名前がみちるの口からこぼれ出て、穏花はさらに目を見開くしかなかった。
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