蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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とこしえの恋路

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 狐神社の裏手に位置する緑渦巻く森林地。
 真夏とはいえ深夜一時、背の高い木々のみずみずしい葉に覆われた辺りは肌に心地よい涼しい空気が流れている。

 森を少し歩けば、やがて目の前に派手さはないが風情ある一筋の滝が現れる。
 灰色の岩に囲まれた先に落ちる水流、蛇珀はここに座禅を組み、静かに目を瞑っていた。

 森さえも眠っているような静寂の中、ただ滝の音だけが響き、自身も大地の一部と化したような錯覚に陥る。
 街灯もなく、唯一頼りとなる月明かりは見事に滝壺を照らし、白い手ぬぐい一枚を腰に巻き滝行に励む蛇珀を讃えていた。
 その姿の、なんと絵になることか。
 恋を知り男に磨きがかかった蛇珀の清廉さと耽美さを併せ持つ魅力たるや、もはや狐雲をも凌駕するほどであった。

「ふぅ……」

 そろそろいいだろうと、心身を鎮めた蛇珀が岩を踏みしめ滝から上がる。
 持って来ていた大きめのバスタオルで濡れた髪と身体をぬぐっていると、ふと、小枝が何かの重みで折れたような音がした。

 蛇珀の斜め左、目にしたそこには、細い木々の隙間からこちらを覗く少女……いや、妻の姿があった。

「――いろり……!?」

 驚いた蛇珀は急ぎいろりの側に駆け寄った。
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