蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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とこしえの恋路

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「まだそこまで至っておらぬようだな」
「う、うるせえ、いろいろあるんだよ……あっ! 心を読むんじゃねえぞ!!」

 取り乱す蛇珀を、狐雲は相変わらず冷静な顔つきで見る。
 切長の琥珀色の瞳は、神眼を使わずとも何もかもを見透かしているようであった。

「蛇珀よ」
「こ、今度はなんだ」
「なすがままに……そなたといろりには、それが一番合うておる」
「な、なんだよそれ」
「ふ……まさかそなたと愛を語らう日が来ようとはな」
「気色悪い言い方してんじゃねえよ」
「では、邪魔者はこれにて退散。いろりによろしくな」

 様々な意味合いが込められたような、深い笑みを残し、狐雲は姿を消した。

 蛇珀はしばし、狐雲が消えた空間を眺めていた。

 ――なあ、狐雲、お前も……こんなことで悩んだりしたのか?

 聞きたかったが聞けなかったこと。
 しかし尋ねたところで狐雲は答えは自分で出すからこそ意味があると言い、決して教えてはくれないだろう。
 実際、狐雲は蛇珀に何が起きているのかあらかた想像はついていた。
 しかしやはり、あえて何も言わなかった。
 その葛藤を乗り越え、恋焦がれる女に受け止めてもらえた時の景色がどれほど尊いものかを知っていたからだ――。
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