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とこしえの恋路
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「……やってやるさ、あいつが無駄な死を望むわけねえからな」
少し寂しげに、しかし頼もしく誓った蛇珀の横顔を見た狐雲は、あることを悟った。
蛇珀が他よりも強い力を持って生まれたのは、幸運だったわけでも、力が蛇珀を選んだわけでもない。蛇珀が力を選んだのだと。
その器と、逞しさと、優しさが、強い神力を引き寄せたのだ。それは偶然ではなく、必然であった。
狐雲は踊り出したいほど嬉しくなった。
目にかけていた人間嫌いの蛇珀が、自分と同じ道を歩むことですでにここまで成長したのだから。
「そなたなら成せるであろう。しかし蛇珀よ、悲観することはない。いろりと同じ墓には入れなくとも、亡骸の欠片を仙界に連れ帰ることはできる。それを土に埋めれば、やがていろりの花が咲くであろう」
「……もしかして、お前がいつも気にかけてた椿の花は」
「いかにも。私の最初で最後の伴侶、華乃である」
仙界に唯一咲く花にいつも優しげな視線を向けていた狐雲。その理由を知り、蛇珀はすっかり納得した。
「私たち神は人間と違い、いにしえの記憶でもすぐ近日にあったように感じることができる。時折人型であった華乃を恋しく思うこともあるが、悲しみに暮れはせぬ。華乃との日々を思い返せば、未だに胸躍る」
いつも大人で余裕のある狐雲が、華乃のことを口にした今は、子供のような無邪気な笑顔を浮かばせていた。
そんな狐雲を見た蛇珀は、どこか誇らしいような不思議な気持ちになっていた。
それは蛇珀が初めて感じる、尊敬の念であった。
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