157 / 182
とこしえの恋路
15
しおりを挟む
「そ、そうね! あの神社の神主さんは見たことがなかったわ、あなたがしていたなんて。私もよく参拝に行っていたのよ」
「え、お母さんが?」
「ええ、仕事帰りにね、いろりが生まれてからほとんど毎日よ。あなたの……目がよくなるようにと、いい人に出逢えますように、ってね、ふふ」
「……そうだったんだ。知らなかった」
「でも、まさか本当にこんなことが起きるなんて、ご利益があったのかしらねぇ」
普通ならどこで知り合ったのか、本当にうちの娘を幸せにできるのか、などまだまだ質問が有るだろうが、さゆりは問い正すようなことはしなかった。
「二人の結婚を認めます」
さゆりは二人に天真爛漫な笑みを向けながら、当然のようにそう言った。
あまりの快諾に蛇珀といろりは口を開け顔を見合わせた。
「ほ、本当に、いいの?」
「だって、蛇珀君といるあなた、とっても楽しそうなんだもの。早い結婚はよくないと言う人もいるけれど、私は年齢は関係ないと思うわ。運命の人に出逢った、その時がタイミングだと思うもの」
そして穏やかな笑みの後、さゆりは少しだけ神妙な面持ちを蛇珀に向けた。
「蛇珀君、一つだけお願いしたいの。いろりはね、ついこの間まで目が見えなかったわ。だから、これからは今までできなかったことをさせてあげたいの。私が言うのもなんだけど、いろりは頭もいいから大学にだって行かせてあげたいし、やりたい仕事があるならそれに就いてもらいたい。お嫁さんとしてだけじゃなく、一人の人間として、いろりの人格を尊重してあげてほしいわ」
「お母さん……」
それは大切に育てて来た娘が幸せになるための母の願いだった。
蛇珀はそれをしかと聞き届けた。
「え、お母さんが?」
「ええ、仕事帰りにね、いろりが生まれてからほとんど毎日よ。あなたの……目がよくなるようにと、いい人に出逢えますように、ってね、ふふ」
「……そうだったんだ。知らなかった」
「でも、まさか本当にこんなことが起きるなんて、ご利益があったのかしらねぇ」
普通ならどこで知り合ったのか、本当にうちの娘を幸せにできるのか、などまだまだ質問が有るだろうが、さゆりは問い正すようなことはしなかった。
「二人の結婚を認めます」
さゆりは二人に天真爛漫な笑みを向けながら、当然のようにそう言った。
あまりの快諾に蛇珀といろりは口を開け顔を見合わせた。
「ほ、本当に、いいの?」
「だって、蛇珀君といるあなた、とっても楽しそうなんだもの。早い結婚はよくないと言う人もいるけれど、私は年齢は関係ないと思うわ。運命の人に出逢った、その時がタイミングだと思うもの」
そして穏やかな笑みの後、さゆりは少しだけ神妙な面持ちを蛇珀に向けた。
「蛇珀君、一つだけお願いしたいの。いろりはね、ついこの間まで目が見えなかったわ。だから、これからは今までできなかったことをさせてあげたいの。私が言うのもなんだけど、いろりは頭もいいから大学にだって行かせてあげたいし、やりたい仕事があるならそれに就いてもらいたい。お嫁さんとしてだけじゃなく、一人の人間として、いろりの人格を尊重してあげてほしいわ」
「お母さん……」
それは大切に育てて来た娘が幸せになるための母の願いだった。
蛇珀はそれをしかと聞き届けた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
八百万の学校 其の参
浅井 ことは
キャラ文芸
書籍化作品✨神様の学校 八百万ご指南いたします✨の旧題、八百万(かみさま)の学校。参となります。
十七代当主となった翔平と勝手に双子設定された火之迦具土神と祖父母と一緒に暮らしながら、やっと大学生になったのにも関わらず、大国主命や八意永琳の連れてくる癖のある神様たちに四苦八苦。
生徒として現代のことを教える
果たして今度は如何に──
ドタバタほのぼのコメディとなります。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる