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とこしえの恋路
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「…………ん……?」
いろりは身体をよじり、やや顔をしかめて声を漏らした。
重い瞼が徐々に持ち上がると、いろりの視界には黄色みを帯びた明かりが入った。
目覚めて最初に認識できたのは、四角い傘を被った古めかしい照明だった。
目を擦りながら身体を起こすと、自身がよもぎ色の畳に寝ていたことがわかる。
――私……一体いつの間に寝て……? 確か、蛇珀様とまた逢えて、それから印が現れて……。
なぜかいろりの記憶はそこからぷつりと途絶えており、徐々に頭が覚醒し始めると、もしや蛇珀とのあの逢瀬が夢だったのかと恐ろしくなった。
「蛇珀様!? 蛇珀さ、ま――……?」
思わず焦り辺りを見回しながら蛇珀を呼ぶいろりだったが、目当ての相手はすぐ側にいた。
いろりが座っているすぐ隣で、蛇珀は未だ夢の中――で、そこまでは理解できたのだが。その寝姿に、いろりは仰天の表情をした。
「じゃ……じゃは、く、さま……!?」
「……んん? なんだ? 俺らあれからどうして」
「じゃっ、蛇珀様! か、髪が」
「髪?」
いろりは驚きの余り手元を狂わせそうになりながらも、セーラー服のポケットに入れていた小さな手鏡を取り出した。
そしてそれをまどろみつつ起きた蛇珀に向け、自身の姿を確認できるように見せた。
すると……
いろりは身体をよじり、やや顔をしかめて声を漏らした。
重い瞼が徐々に持ち上がると、いろりの視界には黄色みを帯びた明かりが入った。
目覚めて最初に認識できたのは、四角い傘を被った古めかしい照明だった。
目を擦りながら身体を起こすと、自身がよもぎ色の畳に寝ていたことがわかる。
――私……一体いつの間に寝て……? 確か、蛇珀様とまた逢えて、それから印が現れて……。
なぜかいろりの記憶はそこからぷつりと途絶えており、徐々に頭が覚醒し始めると、もしや蛇珀とのあの逢瀬が夢だったのかと恐ろしくなった。
「蛇珀様!? 蛇珀さ、ま――……?」
思わず焦り辺りを見回しながら蛇珀を呼ぶいろりだったが、目当ての相手はすぐ側にいた。
いろりが座っているすぐ隣で、蛇珀は未だ夢の中――で、そこまでは理解できたのだが。その寝姿に、いろりは仰天の表情をした。
「じゃ……じゃは、く、さま……!?」
「……んん? なんだ? 俺らあれからどうして」
「じゃっ、蛇珀様! か、髪が」
「髪?」
いろりは驚きの余り手元を狂わせそうになりながらも、セーラー服のポケットに入れていた小さな手鏡を取り出した。
そしてそれをまどろみつつ起きた蛇珀に向け、自身の姿を確認できるように見せた。
すると……
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