蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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試練

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「あ、で、でも、少しお料理ができるようになったんです、蛇珀様に食べていただけたらと思って、えぇと、お肉料理を、中心に、あ、でもまだ全然、うまくはないんですが……あ、あ、それから、蛇珀様に、手紙を書い……あ、て、手紙というより、日記のように分厚くなってしまって、読むのが大変かもしれないんですが」
「いろり」
「ひゃいっ!?」

 緊張のあまり焦って早口になっていたいろりは、名前を呼ばれ飛び跳ねながら背筋を伸ばした。
 いつの間にか目の前に近づいて来ていた蛇珀の端麗な顔。
 しかしその表情は、先ほど見せた神らしい潔白な笑顔とは違った。
 苦しげに眉を寄せ、渇望するような熱視線……それは蛇珀の“男”の顔であった。

「……俺はもう我慢できねえ……触れてもいいか?」
「ッ――は……」

 い、と言い終わる前に待ちきれなかった蛇珀がいろりの答えごと唇を奪った。

 触れては離れ、触れては離れを繰り返す口づけは次第に強引さを増し、深いものへと変わる。

 ついに蛇珀は力任せにいろりを地面に押し倒した。
 何度も角度を変え、いろりの小さな口の隙間から潜り込ませた舌で緊張で震えるそれを捕らえ、息もできぬほど絡ませる。

 もう蛇珀が止まらない。
 ここがどこかも忘れ、いろりのセーラー服を乱し、耳に、首筋に、咬みつくように唇を這わせてゆく。

「いろり、いろりっ……逢いたかった、逢いたくて、お前の香りが恋しくて、どうにかなりそうだった……!」

 切羽詰まった吐息とともに耳元でそんな告白をされては、いろりの中で眠っている“女”が身体の奥から這い上がり顔を出す。
 初めての経験にいろりは尋常ではない動悸と火照りを感じていたが、やめてほしいなど微塵も思わなかった。
 蛇珀の牙が、爪がやや肌に食い込む痛みさえも愛おしい。
 いつも大切に扱ってくれるこの神が、獣のように自身を求める姿は、いろりに至福の悦びだけを与えた。
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