蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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試練

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「う……うあああああああん!! じゃ、じゃはくさまあああああああ!!!」
「待たせて悪かった、いい子にしてたか?」
「ち、ちっとも、いい子ではありませんでした! あなたを想ってたくさん泣いてしまいました! ごめんなさい、ごめんなさい!」
「ッ……謝らなくていい、嬉しい。でももう二度と悲しい涙は流させねえから」
「うぅっ……は、い、はい……、お、おかえりなさい、蛇珀様……!」
「ああ……ただいま、いろり」

 白く輝く星屑に包まれながら、渇望していた再会を噛み締める二人を、狐雲と鷹海は見届けていた。

「……ぅ、ぐっ……」
「泣くでないぞ、鷹海。そなたの涙は海を荒らす」
「は、はっ、わかっております」
「私でも六月むつきかかった苦行を四月よつきで終えるとは見上げた奴よ」
「三百で中流神とは赤子が将軍になるようなもんじゃ……」
「これで約束通り、二人のことは私に一任くださるということでよろしいですな? 天獄様」
『うむ、任せる』

 狐雲は二人が難関を突破した暁には、自身にその行く末を見守る権利を与えるよう申し出ていたのだ。

「見事苦行を明けたそなたたちには私と天獄様より心ばかりの贈り物がある故、楽しみにしておれ」
「そうじゃ、蛇珀! 狐雲様は貴様らの件について様々な口添えをくださっておった。感謝するんじゃぞ」

 鷹海にそう言われた蛇珀は、いろりを抱いていた腕を一旦緩めると、狐雲と鷹海に向き直り、真剣な面持ちで歩み寄った。
 そしてなんと、立ち止まった蛇珀は二人に対し整った姿勢で頭を下げたのである。

「お二人……お気遣い、感謝いたします」

 敬語にお辞儀。
 想像を絶する蛇珀の真摯な姿に、狐雲も鷹海も言葉を失い目が落ちそうなほど驚嘆した。
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