蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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試練

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「鷹海様」
「ようここまで来たもんじゃ。天獄様、わしも同席してもよろしいじゃろうか?」
『かまわぬ』

 いろりを中央に、右側に狐雲、左側に鷹海が跪いた。

『此度《こたび》は双方の苦行が完了した故呼び立てた次第。これにより、蛇珀と主の婚礼の儀を承認する』

 頭を下げていたいろりは、思わず顔を上げ、天獄を見た。
 その声色、口調は、心なしか以前羅獄として会った時よりもずいぶん穏やかに感じられた。

『儀式の方途は……主らが愛し合っておれば自然と成せることである故、我から説くまでもない。……東城いろり』
「は、はいっ!」
『人間には人間の言い分があるように、我にも我の言い分がある。我は数百年に一度、苦しみに耐え神樹しんじゅの葉の雫として神を生み出す。人間が己の子を手塩にかけ育むのと同じ。その子を軽率に惑わす人間は許し難い。また、己が子が過ちを犯した際、それを御するのも親が勤めである。……わかってくれ』

 天獄は優しく、諭すように言葉を連ねた。
 天獄とて、自身の子を、そしてその子の想い人を好んで痛ぶっているわけではないのだ。
 ただ、神と人との領分をわきまえ、障害にも屈さず、添い遂げる覚悟があるのか、見極める必要があった。
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