蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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試練

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「それはなんじゃ? 何か書いておったようじゃが」
「あ、これはですね……」

 いろりは途端少し恥じらうように頬を染めた。
 鷹海が聞いたのは、いろりの机に置いてあるノートと手紙の山だった。

「蛇珀様への、お手紙なんです」
「手紙!? それがか?」
「は、はい。毎日書いているうちにすごい量になってしまったので、もう便箋や封筒ではなくノートに書こうかと……日記のような形になってしまいましたが」
「そ、そうか」
「あ! や、やっぱりこういうのは男の人には重いでしょうか!?」
「い、いや! 蛇珀の奴なら喜ぶじゃろ」
「本当ですか? だといいのですが」

 相手の気持ちを考え、不安になったり喜んだりする。
 いろりの表情の変化を見て、恋とはそういうものなのかと鷹海は漠然と思っていた。

「そういえば、百恋様や学法様は名前に生き物の漢字が入っていませんが、鷹海様たちのように動物の姿になれるのですか?」
「獣の姿を借りて神力を温存できるのは、わしら三角頂だけじゃ。百恋の奴はずるいとのたまっておったぞ」
「あはは、そうでしたか。目に浮かびます」

 思っていたより元気そうないろりを前に、鷹海は安堵した。

「……あまり無理をするなよ。わしはそろそろ帰る」
「あ、はい。わざわざお気遣いありがとうございました。お気をつけて」

 その言葉を最後に、黒鳥は部屋から消えた。
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