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ありし日の恋物語
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若き日の狐雲は常に不機嫌であった。
自身の苛立ちなどを胸の内に留めておけず、すぐに顔や言動に出てしまう。
上流神になった狐雲しか知らぬ神たちには到底想像もつかない姿である。
狐雲はやたらと男たちから寿命を取り立てていた。
その理由は、女嫌いのためである。
下流神として神力がまださほど強くなかったとはいえ、狐雲の美貌は群を抜いていた。
どの神にも類を見ないその秀麗さに、人間は狐雲を前にするとひれ伏した。
そんな狐雲に、願い聞きの際一目惚れをする女は少なくなかった。
それだけならばまだよかったが、あろうことか狐雲に色仕掛けをする女が次から次へと現れたのである。
自ら衣類を乱し、にじりよる女たちを見てその穢らわしさに吐き気を覚えた狐雲は、完全に女嫌いになってしまった。
願い聞きをするにも女を避け、男ばかりに絞っていたため、この時期の国はやけに男の早死にが増えており、他の神の反感を買っていたのである。
しかし狐雲の協調性のなさは、美貌に等しいほど群を抜いていた。
蛇珀のように抜けた部分があればまだ可愛気もあったのだろうが、狐雲は頭までよかったため手がつけられず、他の神から面倒ごとのように遠ざけられていたのである。
そんな狐雲にかまいだてするのは変わり者の学法くらいであった。
人間界に降り立った狐雲は、神眼を使い無関心そうに標的を定める。そこに移動し、願い聞きを終えると、すぐに相手の記憶を消しその場を去った。
女嫌いで、何事にも興味がなく、ただ寿命を伸ばすために生きているような無色の日々。
自身の苛立ちなどを胸の内に留めておけず、すぐに顔や言動に出てしまう。
上流神になった狐雲しか知らぬ神たちには到底想像もつかない姿である。
狐雲はやたらと男たちから寿命を取り立てていた。
その理由は、女嫌いのためである。
下流神として神力がまださほど強くなかったとはいえ、狐雲の美貌は群を抜いていた。
どの神にも類を見ないその秀麗さに、人間は狐雲を前にするとひれ伏した。
そんな狐雲に、願い聞きの際一目惚れをする女は少なくなかった。
それだけならばまだよかったが、あろうことか狐雲に色仕掛けをする女が次から次へと現れたのである。
自ら衣類を乱し、にじりよる女たちを見てその穢らわしさに吐き気を覚えた狐雲は、完全に女嫌いになってしまった。
願い聞きをするにも女を避け、男ばかりに絞っていたため、この時期の国はやけに男の早死にが増えており、他の神の反感を買っていたのである。
しかし狐雲の協調性のなさは、美貌に等しいほど群を抜いていた。
蛇珀のように抜けた部分があればまだ可愛気もあったのだろうが、狐雲は頭までよかったため手がつけられず、他の神から面倒ごとのように遠ざけられていたのである。
そんな狐雲にかまいだてするのは変わり者の学法くらいであった。
人間界に降り立った狐雲は、神眼を使い無関心そうに標的を定める。そこに移動し、願い聞きを終えると、すぐに相手の記憶を消しその場を去った。
女嫌いで、何事にも興味がなく、ただ寿命を伸ばすために生きているような無色の日々。
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