蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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『人間如きが。誰が許可なく発言してよいと言った』
 
 いろりは天獄の力により喉が詰まったように息ができなくなる。まるで縄で首を絞められているような感覚に、いろりは両手で自身のそこに爪を立てた。

 その事態に、狐雲は冷静かつ迅速に助け船を出す。

「天獄様、このおなごの戒めをお解きください。さもなくば、今後私の寿命の譲渡を一切お断りいたします」
『何……』

 神々は人の寿命をもらい生きながらえている。天獄は、その神々の寿命を受けることで長きに渡り存在することができる。
 天獄の力を前にし、逆らう神などいないことは言うまでもないが、この狐神は別である。
 最も有能であり人の寿命に百倍の価値を与えることのできる狐雲は、天獄にとっても手放すには惜しい存在。それを踏まえた上で発言しているしたたかな神である。

 それを聞いた天獄は、いろりを解放した。
 戒めが解かれたいろりは地に崩れるように座り込んだ。

『この我を脅すとは……誠、主は破天荒な神よ』
「恐れ入ります」
「こ、狐雲様、ありがとうございます」
「頭を垂れよ。二度目はないぞ」
「は、はい……! も、申し訳ありませんでした……!」

 いろりは地に這いつくばるように深々と頭を下げた。
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