蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「狐雲様に、聞いてみませんか? 何も、答えてはくださらないかもしれませんが……」
「ああ。俺もそう思ってた。自分より上の神の心は読めねえから聞くしかねえ。あいつに頼るのは癪に障るが、そんなこと言ってる場合じゃねえ。できることはなんでもやってやる」

 蛇珀はついに逃げることをやめた。

 いつまでもいろりとの甘い日々に浸っていたかったが、その場凌ぎではダメなのだと気がついた。
 先を見据え、末永く連れ添うために現実を受け入れること。
 そのためにはどんな困難にも打ち勝つという気概が、この神にはあった。

「あの……私もご一緒しても、よろしいのでしょうか?」
「当たり前だろ。この蛇珀様の妻になる女なんだからな」

 に、と得意気に口角を上げる、自信家の蛇珀らしい笑み。
 二人は向き合い、互いを見つめ合っていた。

「蛇珀様……好きです。大好きです」

 身長差から自然と上目遣いになるいろり。
 そんな熱を込めた瞳に自らを映された蛇珀は、まるで心臓を鷲掴みにされたかのように身動きが取れなくなる。

 いろりから目が離せない。
 その優しくも意思の強い瞳に、吸い込まれてしまいたいとさえ望む。
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