蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「その……あるんでしょうか? 神様と人が、うまくいく方法が……?」

 いろりの問いかけに、蛇珀は少し考え込んだ風に顎に手を当てた。

「狐雲の奴は大昔に人間の女と恋に落ちたことがあるらしい」
「えっ!? あ、あの狐雲様が……!?」
「他の神からちらっと聞いた噂だから事実かわからねえけどな。後は記憶に新しいのは、三百年前くらいに、戦神の拳豪けんごうって奴がいたみたいだが、そいつも人間の女を好きになったらしい」
「そうなんですか……! では、その神様に聞けば、何かわかるんでしょうか?」

 蛇珀は首を横に振った。

「そいつはもういねえ」
「……いない?」
「露になり消えたらしい」

 いろりの脳裏に蘇る。
『――露の如く消えるだけじゃ!』
 あの時の、鷹海の台詞。

「……露となり消えるというのは、神様の死を、意味しているんです、よね……?」
「俺たちはみんな、仙界に一本だけある神樹の葉から流れ落ちる露として生まれるんだ。だから露になるっていうのは、生まれる前に帰るってことで……まあ平たく言やあ死ぬ、ってことだな」

 その神秘的な生の受け方からして、やはり神と人との違いは明白なのである。

 人が命尽きることを土に還ると表現するように、神の死は露と消えると謳われているのだった。

「神様は、永遠に生き続けられるとばかり思っていました」

 例え願い聞きをしなくとも、何か特別な力で守られていると、漠然と考えていたいろりは自身の甘さを諌めた。
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