蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「いろり、そなたも蛇珀の想いに相違ないな?」
「は、はいっ! わ、私のような普通の人間が……おこがましすぎるとは思いますが……蛇珀様と、ずっと一緒に、いたいです」

 控えめながらも明確に、凛と狐雲を見据えて想いを示すいろりに、蛇珀は胸の内が熱くなるのを感じた。

「そなたたちの気持ちはわかった。なればこの世――仙界の理を教えよう。まずは申し遅れたが、私は空を司る狐神の狐雲。よわいは千を数える」
「せ、千ッ……!?」

 想像以上の桁にいろりが驚きの声を漏らした。

「そこにおるのが海を司る鷹神たかがみの鷹海。齢は六百になったか」
「はい、狐雲様。あなた様のお手を煩わせることはありません。ここからはわしが説明いたしましょう」
「よい。任せる」

 鷹海は狐雲に心酔しており、必要がなくとも側にいる。そうしていつの間にか付き人のようになっていた。

「空、海、地を司るわしら三人の神を三角頂と呼ぶ。他にも恋神こいがみ学神まなびがみ戦神いくさがみなど様々な神がおるが、三角頂はこの世の土台となる最も重要な神であり、わしらが穏やかであれば国も平和であると言われておる」

 それを聞いたいろりはほう、と息をつきながら尊敬の眼差しを蛇珀に向けた。

「蛇珀様は神様の中でもすごい方だったんですね……!」
「お、おう! まあなー、はは!」
「その分責も重いということじゃ。わしらの心が乱れれば国も荒れる。蛇珀が地を揺らしたことで、必要以上の命が消え失せる可能性があったということじゃぞ。貴様もそれがわからぬほど愚かではあるまい」

 いろりは衝撃を受けた。
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