47 / 182
仙界
15
しおりを挟む
「膝をついて座れ、狐雲様の御前じゃ」
「は、はい!」
「チッ……」
鷹海に指示され、いろりは柔らかな緑の苔が生えた地面に正座する。
蛇珀は不満気な顔で胡座をかき、鷹海は片膝をつき跪く形で頭を下げた。
「東城いろり、蛇珀が世話になっておるな」
「あ、い、いいえ、そんな、お世話だなんて滅相もございません!」
「隠し立てせずとも神眼や水鏡で知っておるぞ。そなたたちの様子はすべて……な」
「え……?」
すべて知っていると言われたいろりは、蛇珀との仲睦まじい様子も見られていたのかと思い当たり、顔を赤くしたり青くしたりを繰り返し焦った。
そんないろりの反応を楽しむように、狐雲は狐らしく目を細め笑った。
「あっ、え、えぇと、あの」
「狐雲! いろりで遊ぶんじゃねえ!!」
「これはすまぬ。反応が愛らしゅうて、ついな。……さて、蛇珀」
狐雲の細く切長の目が蛇珀を捕まえる。
「確かに人間界に滞在する許可は出したが……丸一月音沙汰なしとは、いただけぬな」
「うっ……、ま、まあまあそう言うなよ。ほら、土産持って来てやったからさ!」
そう言って立ち上がった蛇珀が懐から出したのは、いなり寿司であった。
「は、はい!」
「チッ……」
鷹海に指示され、いろりは柔らかな緑の苔が生えた地面に正座する。
蛇珀は不満気な顔で胡座をかき、鷹海は片膝をつき跪く形で頭を下げた。
「東城いろり、蛇珀が世話になっておるな」
「あ、い、いいえ、そんな、お世話だなんて滅相もございません!」
「隠し立てせずとも神眼や水鏡で知っておるぞ。そなたたちの様子はすべて……な」
「え……?」
すべて知っていると言われたいろりは、蛇珀との仲睦まじい様子も見られていたのかと思い当たり、顔を赤くしたり青くしたりを繰り返し焦った。
そんないろりの反応を楽しむように、狐雲は狐らしく目を細め笑った。
「あっ、え、えぇと、あの」
「狐雲! いろりで遊ぶんじゃねえ!!」
「これはすまぬ。反応が愛らしゅうて、ついな。……さて、蛇珀」
狐雲の細く切長の目が蛇珀を捕まえる。
「確かに人間界に滞在する許可は出したが……丸一月音沙汰なしとは、いただけぬな」
「うっ……、ま、まあまあそう言うなよ。ほら、土産持って来てやったからさ!」
そう言って立ち上がった蛇珀が懐から出したのは、いなり寿司であった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~
斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている
酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚
後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~
絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。
※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる