蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「――おい、狐雲! 神力を抑えやがれ!!」

 蛇珀の叫び声がこだますと、それに応じるように輝きが鎮まっていく。

「いろり、もう目を開けてもいいぜ」

 蛇珀に促され、いろりは遮っていた手を下ろすと恐る恐る瞼を持ち上げたのだが――。
 前方に座る人物を視界が捉えるや否や、いろりは派手な音を立て土下座の形で地面に張りつき、動けなくなってしまった。

「んぐ、んぐぐぐぐぐ……!」
「もうちょっと抑えろ! このバカ狐雲――痛ッ!!」
「バカは貴様じゃ! 狐雲様とお呼びしろと何度言えばわかるんじゃ!!」
「騒ぎ立てるでない」

 蛇珀の頭上に鷹海の鉄拳が炸裂したが、言われた当人は実に冷静に言葉を述べた。

 存在だけで容易く人を殺めてしまえる。それがこの狐神、狐雲の力であった。
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