蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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蛇珀といろり

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 蛇珀は己の未熟さを反省するのも忘れ、いろりを抱き寄せた。今度は以前のように力任せではなく、優しすぎるほどに。

「……夢なんかじゃねえよ」

 蛇珀は意を決した。

「勘違いがねえように言っておくが、俺はお前……いろりのことを、女として好いているから、な」

 口に出すとなんと居た堪れないのかと、羞恥心に今にも消えてしまいたくなる蛇珀だったが、そんなことはいろりの顔を見れば吹き飛んだ。

「ありがとうございます、蛇珀様……いろりはもう、死んでもかまいません」

 穏やかな目元に涙をいっぱい溜め、微笑む少女に、蛇珀は告げてよかったと心から思った。

「死なせねえよ……」

 そう呟いた蛇珀の、幼さが残るも端正な顔立ちが近づいてくると、いろりは息をするのを忘れ目を見開いていた。
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