蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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蛇珀といろり

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「――ああ、やめだやめ! 神の癖に覗きみたいな真似!」

 蛇珀は頭を掻きむしると、いつもの翡翠色の瞳に戻し、大人しくいろりの帰りを待つことにした。

 白蛇の姿で神力を温存しつつ、押し入れの中で静かにしていると、いろりの足音が近づいてくることに気づく。

 蛇珀は急いで襖を開け押し入れを抜け出すと、人の姿に戻りいろりのベッドに横になった。

 もうすぐいろりに会えると知った蛇珀の反応たるや、まるで飼い主を待つ健気な犬の如く。もちろん本人に自覚など皆無であったが。

「ただいま帰りました」
「……ああ」

 待ってなどいないと言わんばかりに気のない返事をし平静を装う。
 しかし、その後蛇珀の自我を取り繕う余裕は一気に崩れることとなる。

「ちょっと遅かったんじゃねえか」

 身体を起こす蛇珀にそう言われたいろりは、一瞬動きを止めた。

 その違和感を、蛇珀が見逃すはずがない。
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