蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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蛇珀といろり

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「食が細くて心配してたからね、たくさん食べなさい。今時の子なのに甘いものや洋食に興味がなくてお豆腐料理ばかり食べてたんだから」
「だってお豆腐好きなんだもん……」
「はいはい、もちろんあなたが大好きな湯葉も買ってあるから、夜に食べましょうね。目が見えるようになってから、とても元気で母さん嬉しいわ」
 
 なんの前触れもなく盲目が治った時には母は当然驚愕したが、その奇跡を慎ましくも幸せに受け止めていた。

 いろりの父は彼女が生まれてすぐに家を出て行った。彼女の目が不自由だったため、育てることに困難を感じ、逃げたのである。
 しかし母は父の分まで……いや、それ以上の愛を持っていろりを育て、いろりもそんな母に心から感謝していた。

「うん。ありがとうお母さん、いっぱい食べるね」
「そうよ、いろりも年頃なんだからそろそろ気になる人の一人や二人、ねえ?」
「え?」

 不意に、真横にいる蛇珀から視線を感じる。

「男の人はね、あまり痩せすぎているより、少しふくよかな方が好きなんだから」
「ええ!? や、やめてよお母さん、恥ずかしいから!」

 蛇珀を意識して思わず顔を赤くして慌てるいろりだったが、もちろん母にはなんのことかわからない。
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