蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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出逢い

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 部屋に帰ると、ベッドで身体を丸めていた白蛇のいろりが急いで出迎えた。

「あ、あの、大丈夫でしたか? 嫌な目に遭われませんでしたか?」
「……お前、全部知ってたんだな」
 
 いろりの台詞に、蛇珀はすべてを悟った。
 彼女が蛇珀を学校に行かせたくなかったのは、彼が嫌な目に遭わないかと心配したからだ。
 いろりは、知っていた。友達のふりをした彼女たちが、目が見えないのをいいことに落書きなどをして陰で笑っていることを。

「……はい。私は、目が見えなかった分、他のことには敏感なので」
「ならなんで願わねえ? 俺に言えば今すぐ学校一の人気者にだってしてやれるんだぜ。あいつらを懲らしめることだってできる」

 しかし、いろりは首を横に振った。

「それはやめておきます。自分の力で乗り越えなければ、意味がないと思うので。それに、蛇神様のようなすごい方が私なんかのところに来てくださったんですから、もうなんだってがんばれますよ」

 白蛇の姿のままにこりと微笑むいろりを見て、蛇珀は胸が締めつけられるのを感じた。

 そして心に決める。

「……ったく、お前って奴は」

 蛇珀が姿勢を低くし、今度は優しく額に自身のそれを当てる。
 いろりの姿をした蛇珀、そして白蛇の姿をしたいろりの額が合わさると、再び訪れた浮遊感の後、二人は元の身体に戻った。
 ――はずだが。
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