蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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出逢い

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 彼女たちが集まっていた席の、一つ右隣の席。ちょうど蛇珀が今立っている場所から見下ろした机には、こう書かれていた。

『目が見えないくせに学校来んな。お前なんか友達じゃねえよバーカ』

 赤や黒のマジックで殴り書きされた机一面。

 ――――これを見た蛇珀は、なぜかはらわたが煮え繰り返った。

 それは地を司る神である彼が、大地を震えさせてしまうほどの激昂であった。
 しかし、そこはやはり神。奥歯を噛み締めどうにか自制を果たす。
 蛇珀が悪意を持って目を合わせれば人間など刹那に絶命させてしまえるが、それをしたところでいろりのためになるか疑問が浮かんだため決行には及ばなかった。

 しかし抑えきれない怒りの神力がいろりの身体から白銀色の光として漏れる。
 生徒たちはまるで幻覚でも見ているような気になり、特に間近にいた女生徒たちは息を呑んだ。

「……お前ら」
 
 蛇珀は最大限気持ちを落ち着かせる努力をし、悟すように言った。

「これを書いてる自分たちの顔、想像したことがあるのか」

 そう言われた少女たちは、三人互いに目を合わせると、顔を真っ赤にして俯いた。
 身体はいろりであっても、その言葉は間違いなく神からの忠告であった。

 記憶を深く覗けば、いろりの成績がよく、容姿も愛らしいことから妬みが生まれ、それがいじめの原因と思われた。
 本当に人間はくだらない、蛇珀はそう思った。しかし、いろりもまた、人であるということも認めていた。

 その日、蛇珀は人として授業を受け、人として落書きを必死に雑巾で拭き取り、帰路に着いた。
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