12 / 182
出逢い
12
しおりを挟む
彼女たちが集まっていた席の、一つ右隣の席。ちょうど蛇珀が今立っている場所から見下ろした机には、こう書かれていた。
『目が見えないくせに学校来んな。お前なんか友達じゃねえよバーカ』
赤や黒のマジックで殴り書きされた机一面。
――――これを見た蛇珀は、なぜか腑が煮え繰り返った。
それは地を司る神である彼が、大地を震えさせてしまうほどの激昂であった。
しかし、そこはやはり神。奥歯を噛み締めどうにか自制を果たす。
蛇珀が悪意を持って目を合わせれば人間など刹那に絶命させてしまえるが、それをしたところでいろりのためになるか疑問が浮かんだため決行には及ばなかった。
しかし抑えきれない怒りの神力がいろりの身体から白銀色の光として漏れる。
生徒たちはまるで幻覚でも見ているような気になり、特に間近にいた女生徒たちは息を呑んだ。
「……お前ら」
蛇珀は最大限気持ちを落ち着かせる努力をし、悟すように言った。
「これを書いてる自分たちの顔、想像したことがあるのか」
そう言われた少女たちは、三人互いに目を合わせると、顔を真っ赤にして俯いた。
身体はいろりであっても、その言葉は間違いなく神からの忠告であった。
記憶を深く覗けば、いろりの成績がよく、容姿も愛らしいことから妬みが生まれ、それがいじめの原因と思われた。
本当に人間はくだらない、蛇珀はそう思った。しかし、いろりもまた、人であるということも認めていた。
その日、蛇珀は人として授業を受け、人として落書きを必死に雑巾で拭き取り、帰路に着いた。
『目が見えないくせに学校来んな。お前なんか友達じゃねえよバーカ』
赤や黒のマジックで殴り書きされた机一面。
――――これを見た蛇珀は、なぜか腑が煮え繰り返った。
それは地を司る神である彼が、大地を震えさせてしまうほどの激昂であった。
しかし、そこはやはり神。奥歯を噛み締めどうにか自制を果たす。
蛇珀が悪意を持って目を合わせれば人間など刹那に絶命させてしまえるが、それをしたところでいろりのためになるか疑問が浮かんだため決行には及ばなかった。
しかし抑えきれない怒りの神力がいろりの身体から白銀色の光として漏れる。
生徒たちはまるで幻覚でも見ているような気になり、特に間近にいた女生徒たちは息を呑んだ。
「……お前ら」
蛇珀は最大限気持ちを落ち着かせる努力をし、悟すように言った。
「これを書いてる自分たちの顔、想像したことがあるのか」
そう言われた少女たちは、三人互いに目を合わせると、顔を真っ赤にして俯いた。
身体はいろりであっても、その言葉は間違いなく神からの忠告であった。
記憶を深く覗けば、いろりの成績がよく、容姿も愛らしいことから妬みが生まれ、それがいじめの原因と思われた。
本当に人間はくだらない、蛇珀はそう思った。しかし、いろりもまた、人であるということも認めていた。
その日、蛇珀は人として授業を受け、人として落書きを必死に雑巾で拭き取り、帰路に着いた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
a scene〜僕と山本さんの○○生活〜
リヒト
キャラ文芸
「えへへー。ゆーとさんと同じ歩幅にしてみましたー」お約束満載、ニヤニヤ保証の甘々ラブコメ。
天然美少女とひねくれ男子が繰り広げる微ズレ会話の日常系ほっこり物語。
急に始まる同居生活はお茶の間ラブのスタート⁉
高校一年夏休み最後の日、呼び鈴のまま引き戸を開けると美少女が……。
とびきり可愛い山本さんに流され巻込まれ、こじんまりした日本家屋で始まる二人暮らし。
思春期全開ひねくれ男子とイギリス帰りの天然美少女が繰り広げる幸せいっぱいの物語。
堅実人生を営みたい僕に襲いかかった美少女同居生活は、ドキドキしてハラハラして、イチャイチャ……なのか?
後宮見習いパン職人は、新風を起こす〜九十九(つくも)たちと作る未来のパンを〜
櫛田こころ
キャラ文芸
人間であれば、誰もが憑く『九十九(つくも)』が存在していない街の少女・黄恋花(こう れんか)。いつも哀れな扱いをされている彼女は、九十九がいない代わりに『先読み』という特殊な能力を持っていた。夢を通じて、先の未来の……何故か饅頭に似た『麺麭(パン)』を作っている光景を見る。そして起きたら、見様見真似で作れる特技もあった。
両親を病などで失い、同じように九十九のいない祖母と仲良く麺麭を食べる日々が続いてきたが。隻眼の武官が来訪してきたことで、祖母が人間ではないことを見抜かれた。
『お前は恋花の九十九ではないか?』
見抜かれた九十九が本性を現し、恋花に真実を告げたことで……恋花の生活ががらりと変わることとなった。
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
カクヨムとノベプラにも掲載しています。
まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、
ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、
私のおにいちゃんは↓
泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!
雇われ側妃は邪魔者のいなくなった後宮で高らかに笑う
ちゃっぷ
キャラ文芸
多少嫁ぎ遅れてはいるものの、宰相をしている父親のもとで平和に暮らしていた女性。
煌(ファン)国の皇帝は大変な女好きで、政治は宰相と皇弟に丸投げして後宮に入り浸り、お気に入りの側妃/上級妃たちに囲まれて過ごしていたが……彼女には関係ないこと。
そう思っていたのに父親から「皇帝に上級妃を排除したいと相談された。お前に後宮に入って邪魔者を排除してもらいたい」と頼まれる。
彼女は『上級妃を排除した後の後宮を自分にくれること』を条件に、雇われ側妃として後宮に入る。
そして、皇帝から自分を楽しませる女/遊姫(ヨウチェン)という名を与えられる。
しかし突然上級妃として後宮に入る遊姫のことを上級妃たちが良く思うはずもなく、彼女に幼稚な嫌がらせをしてきた。
自分を害する人間が大嫌いで、やられたらやり返す主義の遊姫は……必ず邪魔者を惨めに、後宮から追放することを決意する。
京都式神様のおでん屋さん 弐
西門 檀
キャラ文芸
路地の奥にある『おでん料理 結(むすび)』ではイケメン二体(式神)と看板猫がお出迎えします。
今夜の『予約席』にはどんなお客様が来られるのか。乞うご期待。
平安時代の陰陽師・安倍晴明が生前、未来を案じ2体の思業式神(木陰と日向)をこの世に残した。転生した白猫姿の安倍晴明が式神たちと令和にお送りする、心温まるストーリー。
※一巻は第六回キャラクター文芸賞、
奨励賞を受賞し、2024年2月15日に刊行されました。皆様のおかげです、ありがとうございます✨😊
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
『平凡』を求めている俺が、チート異能を使ったりツンデレお嬢様の執事になるのはおかしいと思うんだが
水無月彩椰
キャラ文芸
「あなた──私の執事にならない?」
仙藤志津二は、学園都市に位置する武警高という少しばかり特殊な学校に通う高校生。それでいて、異能者である。
そんな彼は始業式の日に遅刻したことで、学園最強とも名高い異能者、鷹宮彩乃と出会ってしまった。
──そこからだった。平凡を求める志津二の生活が大きく変わったのは。(美少女との二人きりの同棲生活。しかも執事という職のオマケ付き)
だが、彼を待ち受ける困難はそれだけでは無かった。鷹宮彩乃に出会ってしまったことにより、社会の裏に浸透した二つの異能者組織が、大きく動き出す──!
異能バトルアクション×ラブコメディー小説、ここに誕生!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる