蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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出逢い

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「でも私、目をよくしていただきましたし」
「それは俺が勝手にやったことだから関係ねえ。神の判断で人間に与えるのには際限がねえからな」
「そ、そうなんですか」

 そんな都合のいいことが、と一瞬考えた少女だったが、この世の幸不幸の振り幅を思うと、なるほどと納得してしまう部分があった。

「口ではいい格好をしたって俺には全部わかるんだぜ」

 未だ少女が願いを渋るため、蛇珀は透視をすることにした。神眼しんがんを使えば人の本心を知るなど容易なのである。
 ――が、それにより蛇珀は再び驚かされることとなる。
 少女の心。それは澄み渡った清水のように一点の濁りなく透き通っていたのだ。

 あり得ない、と蛇珀は思う。
 赤子から大人まで、願いの種類に変化はあれど、今まで欲のない人間など見たことがなかったからだ。

 蛇珀はこの人間に興味を持った。
 名を知りたいと思ったのも初めてであった。

「お前、名前は」
東城とうじょういろりと申します、蛇神様」
「よし、決めた」
「……え? ――キャッ!?」

 突如蛇珀がいろりの額に自身のそれをぶつけ、鈍い音が響いた。
 と、同時に、いろりは全身の力が抜け浮遊感が訪れるという奇妙な体験をする。
 そしてその感覚が終わった時、目の前には自身を見下ろしている自身が立っていた。
 違うのは、いろりの瞳が蛇のように縦長の球体になっていた。
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