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エピローグ
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「お姉ちゃんったら閻火さんが来てから乙女ちっくになったよね、やっぱり好きな人ができたら変わるんだぁ」
「余計なこと言わないの」
ぺちんと指の腹で額を弾いてやると風子はわざと大袈裟に「いった~い!」と言ってみせた。
今年の聖夜は日曜日。葉月ちゃんは家族みんなでショッピングモールに出かけて、プレゼントを買ってもらうのだとはしゃいでいた。
風子は何人かクラスメイトの男子に遊びに行こうと誘われたらしいけれど、興味がないので断ったと言っていた。
我が妹ながら天然小悪魔だなと思うものの、ちゃんとその言動に理由があるのも知っている。
「風子としては嬉しいけどね、お姉ちゃんが幸せそうだし、こーんなカッコイイお兄さんができたんだもん」
「俺のよさがわかるとはさすがは萌香の妹だ」
うんうんと納得したように頷く閻火。
だけど今の風子には、義理の兄よりも推しのアイドルよりも、絶賛夢中な相手がいた。
「いいなぁ、風子もいつか藍之介さんと……」
潤んだ瞳が映しているのは、キッチンで食器の手入れをする藍之介だ。
子供の頃から仲のいい友達がいることは風子に話したことはある。とはいえ会う機会がなかったため、今まで面識はなかった。
この喫茶店を手伝い一緒に過ごしているうちに、風子は藍之介にほの字になってしまったわけだ。
――まあ、なるよね。
見た目もいいし頭もいいし、笑顔なんてその辺の女の子よりもずっとキュートで気配りまでできるんだから。むしろ恋する方が自然だとさえ思ってしまう。
私としては大事な幼なじみと妹がうまくいってくれたら喜ばしい。美男美女のカップルは見ているだけで気分がいいし。けれどそれを口に出すのは、下手をすれば藍之介の傷に塩を塗ることになる。なので僭越ながら傍観者に徹している次第だ。
「藍之介さーんっ、風子も一緒にお皿拭きます~!」
内股で小鹿のように駆け寄っていく風子に、藍之介は天使のようににこりと笑う。
「風子ちゃん、お客様だよ」
「あっ、いらっしゃいませー!」
本人に悟らせない巧みな回避術。
閻火の言った通り、藍之介は人間に向いているのかもしれない。
「余計なこと言わないの」
ぺちんと指の腹で額を弾いてやると風子はわざと大袈裟に「いった~い!」と言ってみせた。
今年の聖夜は日曜日。葉月ちゃんは家族みんなでショッピングモールに出かけて、プレゼントを買ってもらうのだとはしゃいでいた。
風子は何人かクラスメイトの男子に遊びに行こうと誘われたらしいけれど、興味がないので断ったと言っていた。
我が妹ながら天然小悪魔だなと思うものの、ちゃんとその言動に理由があるのも知っている。
「風子としては嬉しいけどね、お姉ちゃんが幸せそうだし、こーんなカッコイイお兄さんができたんだもん」
「俺のよさがわかるとはさすがは萌香の妹だ」
うんうんと納得したように頷く閻火。
だけど今の風子には、義理の兄よりも推しのアイドルよりも、絶賛夢中な相手がいた。
「いいなぁ、風子もいつか藍之介さんと……」
潤んだ瞳が映しているのは、キッチンで食器の手入れをする藍之介だ。
子供の頃から仲のいい友達がいることは風子に話したことはある。とはいえ会う機会がなかったため、今まで面識はなかった。
この喫茶店を手伝い一緒に過ごしているうちに、風子は藍之介にほの字になってしまったわけだ。
――まあ、なるよね。
見た目もいいし頭もいいし、笑顔なんてその辺の女の子よりもずっとキュートで気配りまでできるんだから。むしろ恋する方が自然だとさえ思ってしまう。
私としては大事な幼なじみと妹がうまくいってくれたら喜ばしい。美男美女のカップルは見ているだけで気分がいいし。けれどそれを口に出すのは、下手をすれば藍之介の傷に塩を塗ることになる。なので僭越ながら傍観者に徹している次第だ。
「藍之介さーんっ、風子も一緒にお皿拭きます~!」
内股で小鹿のように駆け寄っていく風子に、藍之介は天使のようににこりと笑う。
「風子ちゃん、お客様だよ」
「あっ、いらっしゃいませー!」
本人に悟らせない巧みな回避術。
閻火の言った通り、藍之介は人間に向いているのかもしれない。
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