89 / 158
赤鬼と青鬼
12
しおりを挟む
「い、いきなり後ろから抱きつかないでください、びっくりするじゃないですか」
「そのわりに嫌がる様子はないな?」
にっと不敵に笑み迫ってくる閻火の顔を叩きつけるように両手で制する。危なかった。
頬が熱いのをこの隙に鎮めなければ。
顔が赤いなんて、図星を指されたと自白しているようなものだ。
私を抱きしめているのが閻火だとわかった時、胸を撫で下ろしたなんて絶対に認めたくない。
必死に羽交締め地獄から抜け出すと、問題の件について聞くことにした。
「さっき酔っ払いのじじ……おじさんに絡まれた時に私の手か身体から赤い雷みたいなのが出たんですけど」
「当然だろう、お前は俺の契約者だからな」
閻火は考える隙もなく、胸を張り偉そうに言ってのける。
この色と魔法みたいな力から閻火に関係していると思ったけれど、やっぱりだ。
「他の奴が萌香に触れようとすれば、その指輪に込めた力が発動するようになっている」
閻火に指差された左手小指に視線を落とす。
私たちにしか見えない、契約の証の赤い輪っか。実態はないのでつけている感覚はないけれど、心なしかほのかに熱を帯びている気がする。
「そういうことは先に言ってくださいよ」
「言わない方が秘密兵器みたいでカッコイイだろう」
「どこの厨二病ですか」
前もって説明を受けていなかったことについては少し不満はある。
とはいえこれのおかげで助かったのは事実だ。
私は無意識のうちにこの指輪に……閻火に守られていた。
腕っ節には自信があるので負ける気はしないけれど、無闇に暴れることもできない今、面倒ごとを遠ざけてくれそうだ。
「だがこれはまだ仮状態、本物の契約は指切りではなく指契りだからな」
「ゆ、指千切り……!?」
穏やかではない単語にさっと血の気が引く。
もしかしてちぎった指を食べるとか……?
恐怖妄想が暴走する私を、閻火は顎に手をやり首を傾げながら見ていた。
「なにか思い違いをしているようだが……まあいい。いずれ正式に俺のものになればわかることだ」
「そのわりに嫌がる様子はないな?」
にっと不敵に笑み迫ってくる閻火の顔を叩きつけるように両手で制する。危なかった。
頬が熱いのをこの隙に鎮めなければ。
顔が赤いなんて、図星を指されたと自白しているようなものだ。
私を抱きしめているのが閻火だとわかった時、胸を撫で下ろしたなんて絶対に認めたくない。
必死に羽交締め地獄から抜け出すと、問題の件について聞くことにした。
「さっき酔っ払いのじじ……おじさんに絡まれた時に私の手か身体から赤い雷みたいなのが出たんですけど」
「当然だろう、お前は俺の契約者だからな」
閻火は考える隙もなく、胸を張り偉そうに言ってのける。
この色と魔法みたいな力から閻火に関係していると思ったけれど、やっぱりだ。
「他の奴が萌香に触れようとすれば、その指輪に込めた力が発動するようになっている」
閻火に指差された左手小指に視線を落とす。
私たちにしか見えない、契約の証の赤い輪っか。実態はないのでつけている感覚はないけれど、心なしかほのかに熱を帯びている気がする。
「そういうことは先に言ってくださいよ」
「言わない方が秘密兵器みたいでカッコイイだろう」
「どこの厨二病ですか」
前もって説明を受けていなかったことについては少し不満はある。
とはいえこれのおかげで助かったのは事実だ。
私は無意識のうちにこの指輪に……閻火に守られていた。
腕っ節には自信があるので負ける気はしないけれど、無闇に暴れることもできない今、面倒ごとを遠ざけてくれそうだ。
「だがこれはまだ仮状態、本物の契約は指切りではなく指契りだからな」
「ゆ、指千切り……!?」
穏やかではない単語にさっと血の気が引く。
もしかしてちぎった指を食べるとか……?
恐怖妄想が暴走する私を、閻火は顎に手をやり首を傾げながら見ていた。
「なにか思い違いをしているようだが……まあいい。いずれ正式に俺のものになればわかることだ」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~
保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。
迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。
ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。
昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!?
夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。
ハートフルサイコダイブコメディです。
心の落とし物
緋色刹那
ライト文芸
・完結済み(2024/10/12)。また書きたくなったら、番外編として投稿するかも
・第4回、第5回ライト文芸大賞にて奨励賞をいただきました!!✌︎('ω'✌︎ )✌︎('ω'✌︎ )
〈本作の楽しみ方〉
本作は読む喫茶店です。順に読んでもいいし、興味を持ったタイトルや季節から読んでもオッケーです。
知らない人、知らない設定が出てきて不安になるかもしれませんが、喫茶店の常連さんのようなものなので、雰囲気を楽しんでください(一応説明↓)。
〈あらすじ〉
〈心の落とし物〉はありませんか?
どこかに失くした物、ずっと探している人、過去の後悔、忘れていた夢。
あなたは忘れているつもりでも、心があなたの代わりに探し続けているかもしれません……。
喫茶店LAMP(ランプ)の店長、添野由良(そえのゆら)は、人の未練が具現化した幻〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉と、それを探す生き霊〈探し人(さがしびと)〉に気づきやすい体質。
ある夏の日、由良は店の前を何度も通る男性に目を止め、声をかける。男性は数年前に移転した古本屋を探していて……。
懐かしくも切ない、過去の未練に魅せられる。
〈主人公と作中用語〉
・添野由良(そえのゆら)
洋燈町にある喫茶店LAMP(ランプ)の店長。〈心の落とし物〉や〈探し人〉に気づきやすい体質。
・〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉
人の未練が具現化した幻。あるいは、未練そのもの。
・〈探し人(さがしびと)〉
〈心の落とし物〉を探す生き霊で、落とし主。当人に代わって、〈心の落とし物〉を探している。
・〈未練溜まり(みれんだまり)〉
忘れられた〈心の落とし物〉が行き着く場所。
・〈分け御霊(わけみたま)〉
生者の後悔や未練が物に宿り、具現化した者。込められた念が強ければ強いほど、人のように自由意志を持つ。いわゆる付喪神に近い。
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる