鬼の閻火とおんぼろ喫茶

碧野葉菜

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赤鬼と青鬼

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 始まりに比べると冷静に対処できるようになり、たった四日間で鬼にも慣れたものだ。そう思っていると、閻火がテーブルの隅に設置された箱から割り箸を取り出す。そしてパキンと綺麗に両断した先端で私を指し示した。

「だが萌香よ、お前はがんばりすぎだ、無理をしてはあとで祟るぞ」

 そういえば来てすぐの頃も似たようなことを言っていた。

「平気ですよ、世の中にはもっとたくさん働いてる人だっているんですから」
「他の奴のことは聞いていない、俺が大事なのはお前だけだ」

 まっすぐに感情をぶつけてくる閻火に押し負けそうになる。
 真剣な目は少し苦手で不本意ながら視線を逸らした。
 
「し、心配ご無用です、若いし健康なので」
「……ならいいがな」

 妖しく光る眼差しが私から檜色の台に移る。
 広いテーブルの中央に堂々と置かれた鍋についに閻火が手を伸ばした。

「ふふん、俺の血肉になれるとは幸運な食材たちよ」

 長い指が正しく添えられた箸が肉と野菜を挟み上げる。それが閻火の唇の間に吸い込まれていくのを見ると、急に次の絵が浮かんだ。

 やばい、この店雰囲気はいいけど味の方は――。

「まずい!!」

 態度と同じく絶大な声が駅構内まで響き渡った。
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