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挑戦と距離
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「お姉ちゃん、恋してるじゃん! いつの間にそんなカッコイイ彼氏できたのっ、お祝いしなくちゃあ!」
思わず古典的なこけ方をしそうになる。
仮に従業員がいたとして必ずしも恋愛関係になるとは限らないのに。
葉月ちゃんに至っては、風子の影に隠れるように座りながらもしっかり視線は私を通り越し閻火に注がれていた。しかもその目はぼんやりして、心ここに在らずといった感じだ。
「いつからいたのかわかりませんでしたが……確かにカッコイイ人、ですね」
大事なところに気づいてはいるのに、奇妙よりも魅力に大なりが向いているので仕方がない。いや、私からすれば面倒な言い訳を考えなくて済むので助かった。
この反応からして風子の言う通り、一見興味がなさそうな葉月ちゃんの方が面食いらしい。
そういえば藍之介に会った時も恥ずかしがっていたので納得だ。
人は見かけによらないということは身を持って知っているけれど、こんな意外性なら可愛いものだ。
コーヒーを飲み終えたのか、閻火がカップをキッチン台に置いた時だった。
未だ頬をピンク色に染める葉月ちゃんの膝上から、一匹の猫が駆け出した。
テーブルとカウンターを軽やかに飛び越えたかと思うと、あっという間に閻火の前にやって来た。
閻火は驚くでもなく当然のように手を差し伸べる。するとしまちゃんはその腕を枝のように慣れた足取りで登り、たどり着いた広い肩にお座りした。
「みゃうみゃう」と話すように鳴くしまちゃんに、閻火は耳を傾け小さく頷いた。
「そうか、お前も萌香に拾われたのだな」
「ど、動物の言葉がわかるんですか?」
そうとしか思えない答えに問いかけると、閻火は肯定を意味する薄い笑みを浮かべた。
「獣は嘘をつけないからな、俺と気が合いそうだ」
閻火自身が獣の姿になれるくらいだ。
親近感もあるのかもしれない。
それにしても一体いくつの顔があるのか、自在に変化する容貌に惑わされそうになる。
思わず古典的なこけ方をしそうになる。
仮に従業員がいたとして必ずしも恋愛関係になるとは限らないのに。
葉月ちゃんに至っては、風子の影に隠れるように座りながらもしっかり視線は私を通り越し閻火に注がれていた。しかもその目はぼんやりして、心ここに在らずといった感じだ。
「いつからいたのかわかりませんでしたが……確かにカッコイイ人、ですね」
大事なところに気づいてはいるのに、奇妙よりも魅力に大なりが向いているので仕方がない。いや、私からすれば面倒な言い訳を考えなくて済むので助かった。
この反応からして風子の言う通り、一見興味がなさそうな葉月ちゃんの方が面食いらしい。
そういえば藍之介に会った時も恥ずかしがっていたので納得だ。
人は見かけによらないということは身を持って知っているけれど、こんな意外性なら可愛いものだ。
コーヒーを飲み終えたのか、閻火がカップをキッチン台に置いた時だった。
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閻火自身が獣の姿になれるくらいだ。
親近感もあるのかもしれない。
それにしても一体いくつの顔があるのか、自在に変化する容貌に惑わされそうになる。
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