鬼の閻火とおんぼろ喫茶

碧野葉菜

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挑戦と距離

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「お姉ちゃん、なにかいいことあった?」

 風子の台詞に今度は私が瞼を上下させる。
 それに便乗するように葉月ちゃんは頷いた。

「あたしもそう思いました、初めて会った時よりも柔らかくなったっていうか、優しい雰囲気になった気がします」
「ええ、私が? なにも変わらないよ?」
「このメニューも見やすくなりましたし、なんか心境の変化を感じます」

 葉月ちゃんってよく気がつくな。
 閻火の指摘があってから品物の写真を載せて、文字も大きめの読みやすいものに変えた。
 まさか鬼の助言を参考にしたとは言えず、苦笑いをする。

「えーとねそれは、思わぬところからの意見を取り入れて」
「さてはお姉ちゃん……恋したね?」

 むふふ、と目を半月型にして含み笑いをする風子に、思わず赤くなり、そして青くなる。

「いやいやっ、そんなことしてる暇ないから!」
「恋って暇とか関係ないじゃん、気づいたら落ちてるものでしょー?」
「あはは、また風子は……」

 合わせた両手に頬を傾けうっとりしながら語る風子。葉月ちゃんはそんな彼女を困った笑顔で眺めながら、未だ夢の中のしまちゃんを撫でていた。
 風子はこう見えてアイドルオタクなので、どうせまたお気に入りのグループでも見つけたのだろう。青春時代、二次元に注力していた私には理解し難い世界だ。

「そんなこと言ってる葉月の方が、けっこう面食いなくせにー」
「えっ? あ、あたしは別にそんな」
「誰でもブサイクよりイケメンの方がいいに決まってるもんね」

 可愛い喧嘩になりそうな二人をまあまあと宥める。
 風子と葉月ちゃんが閻火に会ったら、どんな反応をするのだろう?
 想像すると少し笑えたけれど、当人は今頃上の階で優雅にテレビを見たりお菓子を食べたりしているはずだ。
 地獄とは違う人間界の生活をすっかり堪能しているらしい。
 それにしても私が変わっただなんて言われるとは予想外だった。確かにここ最近の変化といえば閻火が来たことくらいだ。
 いや、違う。
 閻火が来てから、変わったことが一つあった。
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