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挑戦と距離
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「デミグラスっておいしいんだけどこってりしててすぐお腹いっぱいになっちゃうかも、柚子香さんのはぱくぱくいけちゃう系だったもんねー」
風子が私のおばあちゃんを名前で呼ぶのは、彼女とは血の繋がりがないからだ。
柚子香おばあちゃんは私を生んだお母さんのお母さん。お父さんの元奥さん。その女は私が幼稚園の時に出ていってから会っていない。
それからしばらくしてお父さんが新しく連れて来たのが今の奥さんで、風子を生んだお母さん。戸籍上は私のお母さんでもある。
「風子の言うこともわかるよ、あまり重いと軽食としては微妙だよね」
以前閻火が出したフレンチトーストもなかなかパンチの効いた味だった。
インパクトや見た目で勝負するなら申し分ないと思うけれど、正直言うと一度食べたらもういいかな、と感じてしまった。完食しておいてなんだが。
おばあちゃんの料理は見た目は地味だったけれど、どこか懐かしいような、毎日食べても飽きない味だった。
「実は今いろいろお試し中なんだ、だからそうやって意見を言ってくれると助かるな」
風子は少し驚いた様子で大きな瞳をぱちぱちと動かした。
「お姉ちゃんがそんなこと言うなんて思わなかった、今まで一人でやるからほっといてって感じだったのに」
「え……そうだった?」
「そうだよー、必死すぎてなにも言っちゃいけない雰囲気だったもん」
今までの自分の言動を振り返ってみると、確かにそうだったかもしれない。
この店を潰すわけにはいかないって、それだけしか頭になくて、周りに助言を求める余裕なんか持ててなかった。
今も余裕ができたかと言われたらそうではないけれど、ほんの少しだけ視野が広がったのかな。……誰かさんのおかげで。
「ごめんごめん、これからは遠慮せずなんでも言ってね」
風子と葉月ちゃんは顔を見合わせたあと、また私の方を向いた。
風子が私のおばあちゃんを名前で呼ぶのは、彼女とは血の繋がりがないからだ。
柚子香おばあちゃんは私を生んだお母さんのお母さん。お父さんの元奥さん。その女は私が幼稚園の時に出ていってから会っていない。
それからしばらくしてお父さんが新しく連れて来たのが今の奥さんで、風子を生んだお母さん。戸籍上は私のお母さんでもある。
「風子の言うこともわかるよ、あまり重いと軽食としては微妙だよね」
以前閻火が出したフレンチトーストもなかなかパンチの効いた味だった。
インパクトや見た目で勝負するなら申し分ないと思うけれど、正直言うと一度食べたらもういいかな、と感じてしまった。完食しておいてなんだが。
おばあちゃんの料理は見た目は地味だったけれど、どこか懐かしいような、毎日食べても飽きない味だった。
「実は今いろいろお試し中なんだ、だからそうやって意見を言ってくれると助かるな」
風子は少し驚いた様子で大きな瞳をぱちぱちと動かした。
「お姉ちゃんがそんなこと言うなんて思わなかった、今まで一人でやるからほっといてって感じだったのに」
「え……そうだった?」
「そうだよー、必死すぎてなにも言っちゃいけない雰囲気だったもん」
今までの自分の言動を振り返ってみると、確かにそうだったかもしれない。
この店を潰すわけにはいかないって、それだけしか頭になくて、周りに助言を求める余裕なんか持ててなかった。
今も余裕ができたかと言われたらそうではないけれど、ほんの少しだけ視野が広がったのかな。……誰かさんのおかげで。
「ごめんごめん、これからは遠慮せずなんでも言ってね」
風子と葉月ちゃんは顔を見合わせたあと、また私の方を向いた。
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