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原点回帰
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全身に電流が走った。
本気で感電したのかと錯覚するほどの衝撃に打ち震えたのち、フォークを握りしめる。
再びそれはフレンチトーストと私の口を何度も行き来する。
黙々と食べ続ける私を、閻火が不思議そうに覗き込んだ。
「泣いているのか?」
お金や時間がないため大人気のお高いカフェに行けるはずもない。毎日余った具材で同じものばかり食べている人間に染み渡る美味の嵐。
少しくらい鼻先がツンとしても許してほしい。
「う……うまいなどちくしょう!」
「言葉が乱れているぞ」
冷たいとあたたかい、甘いとしょっぱいのセンセーションラブ。正反対の二人の相性のよさを認めずにはいられない。
フレンチトーストは普通は軽食に当たるはずだが、これはもう、スウィーツだ。とはいえデザートにするにはボリュームがありすぎる。なら一周回ってもはや主食か。
そうやって懸命にカテゴリーを探すあたり、やっぱり私は時代遅れなのかもしれない。
頭を悩ませている間も手口は止まらず、気づいた時には残り僅かになっていた。
しまった、と思いながらすぐそばに立つ閻火をそろりと見上げる。
「すみません、私ばかり食べて……閻火も」
「俺はいらんぞ、鬼は冷たいものは好かんからな」
「あ、そ、そうなんですか」
ならアイスクリームやジュースのおいしさを知らないのか。冷しゃぶや冷やし中華も。
鬼に必要ないということは、地獄に冷たい食事自体がないのだろう。
やっぱりそんな場所に住みたくない。
いやでも、週に一回帰省できるなら人間界で食べればいいか。
――って、なにを算段しているのか。行くことなんて絶対ないのに。
余計な思考を振り払うように首を左右に動かす。
そして今から出す料理が、冷たいものが苦手という鬼にぴったりだと思い立ち、目を光らせた。
本気で感電したのかと錯覚するほどの衝撃に打ち震えたのち、フォークを握りしめる。
再びそれはフレンチトーストと私の口を何度も行き来する。
黙々と食べ続ける私を、閻火が不思議そうに覗き込んだ。
「泣いているのか?」
お金や時間がないため大人気のお高いカフェに行けるはずもない。毎日余った具材で同じものばかり食べている人間に染み渡る美味の嵐。
少しくらい鼻先がツンとしても許してほしい。
「う……うまいなどちくしょう!」
「言葉が乱れているぞ」
冷たいとあたたかい、甘いとしょっぱいのセンセーションラブ。正反対の二人の相性のよさを認めずにはいられない。
フレンチトーストは普通は軽食に当たるはずだが、これはもう、スウィーツだ。とはいえデザートにするにはボリュームがありすぎる。なら一周回ってもはや主食か。
そうやって懸命にカテゴリーを探すあたり、やっぱり私は時代遅れなのかもしれない。
頭を悩ませている間も手口は止まらず、気づいた時には残り僅かになっていた。
しまった、と思いながらすぐそばに立つ閻火をそろりと見上げる。
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「あ、そ、そうなんですか」
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やっぱりそんな場所に住みたくない。
いやでも、週に一回帰省できるなら人間界で食べればいいか。
――って、なにを算段しているのか。行くことなんて絶対ないのに。
余計な思考を振り払うように首を左右に動かす。
そして今から出す料理が、冷たいものが苦手という鬼にぴったりだと思い立ち、目を光らせた。
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