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プライスレス
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「あたしはコーヒーよりも、甘いものが好きで」
「じゃあミックスジュースとかはどう?」
「あ、はい、それにします」
「任せて、ジュースは得意だから」
得意もなにも、果物をミキサーに入れてスイッチを入れるだけだから、誰にでも簡単にできるのだ。
キッチンに戻り冷蔵庫を開けると、野菜室いっぱいに入った果物に目を通す。
バナナにキウイ、リンゴにオレンジ、それからなくてはならない牛乳も手に取りドアを閉める。
そして身体を反転させ、一歩足を踏み出した時だった。
「ふうむ、しましまか」
聞こえてはならない場所からその声はやってきた。
胸に抱えた果物をキッチン台に載せたあと、ゆっくりと視線を巡らせその位置を探る。
やがて浮かんだ可能性をたどるように頭を傾けた。
すると床に寝そべるようにして私の真下にいるあいつを見つける。
しかもおばあちゃんの仏壇に備えていたチョコクッキーを食べている。
サクサクサクサク。
なぜよりによってそんなに音が目立つ菓子を頬張っているのか。
いっそのこと今「おいしい」と口にしてくれたらいいのに。いやダメだ。私が作ったものでない市販品で言われても意味がない。
――ちょっと待て。
今はそんなことを考えている場合ではない。
仰向けになっている閻火は私の足元にいる。
膝丈の少し末広がりになったスカートのすぐ下にいる。
そこから臨める光景は、もはや一つしかなかった。
「ぎゃーーっ!!」
可愛らしさとはほど遠い悲鳴がこだます。
咄嗟に閻火の顔面を踏み潰すと「ぐえっ」とカエルが鳴くような音が漏れた。
そうだ、確かにしましまだ。
葉月ちゃんの飼い猫となったしまちゃんと同じ柄に同じ色。
もちろん謀ったわけでも合わせて購入したわけでもない。
たまたま今日の下着がしまちゃんに似ていたというだけだ。
「どうしたんですか!?」
「あ、だ、大丈夫! でっかいゴキブリがいただけだから!」
何事かと心配してくれる葉月ちゃんに弁解しつつ、超高速で果物を切ると牛乳パックの中身とともに透明の器具にまとめ入れた。
「じゃあミックスジュースとかはどう?」
「あ、はい、それにします」
「任せて、ジュースは得意だから」
得意もなにも、果物をミキサーに入れてスイッチを入れるだけだから、誰にでも簡単にできるのだ。
キッチンに戻り冷蔵庫を開けると、野菜室いっぱいに入った果物に目を通す。
バナナにキウイ、リンゴにオレンジ、それからなくてはならない牛乳も手に取りドアを閉める。
そして身体を反転させ、一歩足を踏み出した時だった。
「ふうむ、しましまか」
聞こえてはならない場所からその声はやってきた。
胸に抱えた果物をキッチン台に載せたあと、ゆっくりと視線を巡らせその位置を探る。
やがて浮かんだ可能性をたどるように頭を傾けた。
すると床に寝そべるようにして私の真下にいるあいつを見つける。
しかもおばあちゃんの仏壇に備えていたチョコクッキーを食べている。
サクサクサクサク。
なぜよりによってそんなに音が目立つ菓子を頬張っているのか。
いっそのこと今「おいしい」と口にしてくれたらいいのに。いやダメだ。私が作ったものでない市販品で言われても意味がない。
――ちょっと待て。
今はそんなことを考えている場合ではない。
仰向けになっている閻火は私の足元にいる。
膝丈の少し末広がりになったスカートのすぐ下にいる。
そこから臨める光景は、もはや一つしかなかった。
「ぎゃーーっ!!」
可愛らしさとはほど遠い悲鳴がこだます。
咄嗟に閻火の顔面を踏み潰すと「ぐえっ」とカエルが鳴くような音が漏れた。
そうだ、確かにしましまだ。
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もちろん謀ったわけでも合わせて購入したわけでもない。
たまたま今日の下着がしまちゃんに似ていたというだけだ。
「どうしたんですか!?」
「あ、だ、大丈夫! でっかいゴキブリがいただけだから!」
何事かと心配してくれる葉月ちゃんに弁解しつつ、超高速で果物を切ると牛乳パックの中身とともに透明の器具にまとめ入れた。
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