鬼の閻火とおんぼろ喫茶

碧野葉菜

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求婚ナルシスト

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「俺たちにしか見えない契約の証だ。俺がお前の作ったものを口にし『美味』を意味することを言った場合、この契約は無効、期間内に言わせられなかった場合は妻として地獄に連れ帰る。さしずめ契約結婚といったところか。せいぜいがんばるがいい」

 人間の契約結婚といえばあらかじめ条件を決めることらしい。そしてそれを破れば離婚。
 少しニュアンスが違うけれど、似たようなものだろうか。
 仮の妻から本物の妻に。契約社員から正社員になるような。
 いやここは、契約期間満了を待たずして、ぜひとも破棄にしていただきたい。
 自信満々に口角を上げて見せる閻火に、負けるものかと気合いを入れる。

「そうやって余裕でいられるのも今のうちだけですよ、絶対おいしいって言わせてみせますからね!」

 高らかに宣言する視界があっという間に赤に染まる。それが閻火の和服だと認識するまで時間を要した。

「むきになって可愛い奴め、コーヒーはまずいが愛しているぞ、萌香」

 見た目通りのあたたかな体温に抱きしめられ、腕をぷるぷるとわななかせた。
 このドキドキをときめきに変換してしまう前に、草履を履いた足を思いきり踏んでやった。
 だって知り合ってすぐに好きだの愛してるだの言う男性は信用できないって、おばあちゃんが言ってたもん。
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