29 / 158
求婚ナルシスト
17
しおりを挟む
「三日あれば十分だろう」
ぎゃふん、と声に出して言いそうになる。
今、三日って言った?
そんな、干し柿も出来上がらない僅かな日数でスキルが抜群に上がるはずがない。
「三日は短すぎます、一年くらい見てもらわないと」
「長すぎる、そんなに地獄を空けられるわけがないだろう」
「じゃ、じゃあせめて半年」
「一ヶ月だ、それ以上は譲歩せん」
ぐぬぬ、と頭を抱えるけれど、これはもう仕方がない。
閻魔大王の職務がある鬼だ。きっと本来は私なんかよりずっと忙しいに違いない。
「無理やり連れて行かないだけでもありがたく思え」
言われてみればそうだ。
あの神々しいまでの圧を考えれば、私を力ずくで連れ攫うのなど簡単だろう。
まだ子供や鳳凰の姿に変われることしか知らないけれど、もっと他に隠された力があるように思われた。
突然現れて理不尽だなぁと感じながらも、機嫌を損ねてはなにをされるかわからない。
ここは素直に受け入れよう。
そう心に決めると渋々頷き、閻火の提案を了承した。
すると閻火は立ち上がり、左腕を胸まで上げた。
なんの動作だろうとその手を見てみると、小指だけ持ち上がっていることがわかる。
「約束の指切りだ」
指切りくらいなら……まあいいか。
静かに小指を出すと、左手を伸ばす。
身長差を埋めるように上を向いた私の小指と、下向き加減の閻火の小指が関節を折り、絡み合う。
その瞬間、触れ合った部分が熱を帯び、ふわりと光る茜色に包まれた。
あたたかい。ぽわんとそこだけ日が灯ったようだ。
やがてその光が収まると、小指のつけ根にあるものを見つけた。
大きく開いた瞼を何度もしばめかせ、閻火の繋がりを解くと目の前でそれを確認する。
ぼんやりと発光する、真紅色の輪っか。
閻火は満足げに左手の甲を掲げている。
赤く尖った爪からすとんと落ちたように根元に位置する指輪は、私と同じものだった。
ぎゃふん、と声に出して言いそうになる。
今、三日って言った?
そんな、干し柿も出来上がらない僅かな日数でスキルが抜群に上がるはずがない。
「三日は短すぎます、一年くらい見てもらわないと」
「長すぎる、そんなに地獄を空けられるわけがないだろう」
「じゃ、じゃあせめて半年」
「一ヶ月だ、それ以上は譲歩せん」
ぐぬぬ、と頭を抱えるけれど、これはもう仕方がない。
閻魔大王の職務がある鬼だ。きっと本来は私なんかよりずっと忙しいに違いない。
「無理やり連れて行かないだけでもありがたく思え」
言われてみればそうだ。
あの神々しいまでの圧を考えれば、私を力ずくで連れ攫うのなど簡単だろう。
まだ子供や鳳凰の姿に変われることしか知らないけれど、もっと他に隠された力があるように思われた。
突然現れて理不尽だなぁと感じながらも、機嫌を損ねてはなにをされるかわからない。
ここは素直に受け入れよう。
そう心に決めると渋々頷き、閻火の提案を了承した。
すると閻火は立ち上がり、左腕を胸まで上げた。
なんの動作だろうとその手を見てみると、小指だけ持ち上がっていることがわかる。
「約束の指切りだ」
指切りくらいなら……まあいいか。
静かに小指を出すと、左手を伸ばす。
身長差を埋めるように上を向いた私の小指と、下向き加減の閻火の小指が関節を折り、絡み合う。
その瞬間、触れ合った部分が熱を帯び、ふわりと光る茜色に包まれた。
あたたかい。ぽわんとそこだけ日が灯ったようだ。
やがてその光が収まると、小指のつけ根にあるものを見つけた。
大きく開いた瞼を何度もしばめかせ、閻火の繋がりを解くと目の前でそれを確認する。
ぼんやりと発光する、真紅色の輪っか。
閻火は満足げに左手の甲を掲げている。
赤く尖った爪からすとんと落ちたように根元に位置する指輪は、私と同じものだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。

糧給支部・厨房班、賄い娘の奮闘記〈1〉
翠晶 瓈李
キャラ文芸
妖霊を退治する戦闘師団がある『晶蓮国』。
中でも特に優れた戦闘能力を持つ者は『護闘士』と呼ばれていた。
護闘士たちが生活する班隊でご飯を作る担当になった女の子、那峰 ひよりちゃん(主人公)のお話。

●鬼巌島●
喧騒の花婿
キャラ文芸
むかしむかし鬼ヶ島に
春日童子と焔夜叉という鬼が暮らしていた。
くすんだ青髪、歪んだ小さな角という鬼として最低な外見を
持ち合わせた春日童子は神の依頼を受けることができず
報酬も得ずに家族と暮らしていた。
一方、焔夜叉は炎のような赤い髪、立派に伸びた2本の角という
鬼として最高の外見を持ち合わせ神の依頼を受け
報酬を得ながら1匹孤独に暮らしていた。
対照的な2匹は節分祭で人界に赴き清めの豆によって
人間の邪気を吸う儀式で考えが交錯していく。
卑小な外見だが精神の強い春日童子
立派な外見で挫折を知らない焔夜叉
果たして2匹の鬼としての矜持とは。
さらに神の眷属として産み落とされた聖なる人間に対抗し
鬼の存続を賭けて勝利することができるのか。
※本編は八噺で終わります。

高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符
washusatomi
キャラ文芸
西域の女商人白蘭は、董王朝の皇太后の護符の行方を追う。皇帝に自分の有能さを認めさせ、後宮出入りの女商人として生きていくために――。 そして奮闘する白蘭は、無骨な禁軍将軍と心を通わせるようになり……。
視える宮廷女官 ―霊能力で後宮の事件を解決します!―
島崎 紗都子
キャラ文芸
父の手伝いで薬を売るかたわら 生まれ持った霊能力で占いをしながら日々の生活費を稼ぐ蓮花。ある日 突然襲ってきた賊に両親を殺され 自分も命を狙われそうになったところを 景安国の将軍 一颯に助けられ成り行きで後宮の女官に! 持ち前の明るさと霊能力で 後宮の事件を解決していくうちに 蓮花は母の秘密を知ることに――。
麻雀少女激闘戦記【牌神話】
彼方
キャラ文芸
この小説は読むことでもれなく『必ず』麻雀が強くなります。全人類誰もが必ずです。
麻雀を知っている、知らないは関係ありません。そのような事以前に必要となる『強さとは何か』『どうしたら強くなるか』を理解することができて、なおかつ読んでいくと強さが身に付くというストーリーなのです。
そういう力の魔法を込めて書いてあるので、麻雀が強くなりたい人はもちろんのこと、麻雀に興味がある人も、そうでない人も全員読むことをおすすめします。
大丈夫! 例外はありません。あなたも必ず強くなります! 私は麻雀界の魔術師。本物の魔法使いなので。
──そう、これは『あなた自身』が力を手に入れる物語。
彼方
◆◇◆◇
〜麻雀少女激闘戦記【牌神話】〜
──人はごく稀に神化するという。
ある仮説によれば全ての神々には元の姿があり、なんらかのきっかけで神へと姿を変えることがあるとか。
そして神は様々な所に現れる。それは麻雀界とて例外ではない。
この話は、麻雀の神とそれに深く関わった少女あるいは少年たちの熱い青春の物語。その大全である。
◆◇◆◇
もくじ
【メインストーリー】
一章 財前姉妹
二章 闇メン
三章 護りのミサト!
四章 スノウドロップ
伍章 ジンギ!
六章 あなた好みに切ってください
七章 コバヤシ君の日報
八章 カラスたちの戯れ
【サイドストーリー】
1.西団地のヒロイン
2.厳重注意!
3.約束
4.愛さん
5.相合傘
6.猫
7.木嶋秀樹の自慢話
【テーマソング】
戦場の足跡
【エンディングテーマ】
結果ロンhappy end
イラストはしろねこ。さん
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる