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求婚ナルシスト
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「三日あれば十分だろう」
ぎゃふん、と声に出して言いそうになる。
今、三日って言った?
そんな、干し柿も出来上がらない僅かな日数でスキルが抜群に上がるはずがない。
「三日は短すぎます、一年くらい見てもらわないと」
「長すぎる、そんなに地獄を空けられるわけがないだろう」
「じゃ、じゃあせめて半年」
「一ヶ月だ、それ以上は譲歩せん」
ぐぬぬ、と頭を抱えるけれど、これはもう仕方がない。
閻魔大王の職務がある鬼だ。きっと本来は私なんかよりずっと忙しいに違いない。
「無理やり連れて行かないだけでもありがたく思え」
言われてみればそうだ。
あの神々しいまでの圧を考えれば、私を力ずくで連れ攫うのなど簡単だろう。
まだ子供や鳳凰の姿に変われることしか知らないけれど、もっと他に隠された力があるように思われた。
突然現れて理不尽だなぁと感じながらも、機嫌を損ねてはなにをされるかわからない。
ここは素直に受け入れよう。
そう心に決めると渋々頷き、閻火の提案を了承した。
すると閻火は立ち上がり、左腕を胸まで上げた。
なんの動作だろうとその手を見てみると、小指だけ持ち上がっていることがわかる。
「約束の指切りだ」
指切りくらいなら……まあいいか。
静かに小指を出すと、左手を伸ばす。
身長差を埋めるように上を向いた私の小指と、下向き加減の閻火の小指が関節を折り、絡み合う。
その瞬間、触れ合った部分が熱を帯び、ふわりと光る茜色に包まれた。
あたたかい。ぽわんとそこだけ日が灯ったようだ。
やがてその光が収まると、小指のつけ根にあるものを見つけた。
大きく開いた瞼を何度もしばめかせ、閻火の繋がりを解くと目の前でそれを確認する。
ぼんやりと発光する、真紅色の輪っか。
閻火は満足げに左手の甲を掲げている。
赤く尖った爪からすとんと落ちたように根元に位置する指輪は、私と同じものだった。
ぎゃふん、と声に出して言いそうになる。
今、三日って言った?
そんな、干し柿も出来上がらない僅かな日数でスキルが抜群に上がるはずがない。
「三日は短すぎます、一年くらい見てもらわないと」
「長すぎる、そんなに地獄を空けられるわけがないだろう」
「じゃ、じゃあせめて半年」
「一ヶ月だ、それ以上は譲歩せん」
ぐぬぬ、と頭を抱えるけれど、これはもう仕方がない。
閻魔大王の職務がある鬼だ。きっと本来は私なんかよりずっと忙しいに違いない。
「無理やり連れて行かないだけでもありがたく思え」
言われてみればそうだ。
あの神々しいまでの圧を考えれば、私を力ずくで連れ攫うのなど簡単だろう。
まだ子供や鳳凰の姿に変われることしか知らないけれど、もっと他に隠された力があるように思われた。
突然現れて理不尽だなぁと感じながらも、機嫌を損ねてはなにをされるかわからない。
ここは素直に受け入れよう。
そう心に決めると渋々頷き、閻火の提案を了承した。
すると閻火は立ち上がり、左腕を胸まで上げた。
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「約束の指切りだ」
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