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求婚ナルシスト
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地獄? 門番?
そう言われて脳内に浮かぶのは、頭が三つに割れた犬のケルベロスだけだった。
昔ファンタジーゲームばかりしていた影響だろうか。
混乱していると、閻火と名乗った彼は徐に首を捻り出した。
「もらい受けに、は少し古かったか? 攫いに……は誘拐と間違えられそうだしな、ここは西洋語でスウィートハニー、カモンマイホーム、とでも言った方がよかったか」
自問自答するように独り言を並べる彼を見上げる。
私にとってはなにもかもが理解不能だ。
「あ、あの……もらい受けに、とか、スウィートハニー、とか、どういうことでしょうか?」
聞きたいことは山ほどあるけれど、とりあえず一番気になっている質問を投げかけてみた。
無意識のうちに敬語になってしまう。
すると彼はなぜか少し不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「まどろっこしいことは好かん、とりあえず嫁に来い」
奇天烈な言語が鼓膜に吹きつける。
この時の私の目は文字通り点になっていたに違いない。
「……はい? あの……もう一度言ってもらっていいですか?」
「なんだ? まさか間違っていたか!?」
急に焦り始めた彼は組んでいた腕を解くと、胸の位置で手のひらを広げる。
するとその右手の上に、分厚いハードカバーの本が現れた。
なにもない空間から突然物体が出現し、再び目を疑う。
さらに信じ難いのが、彼自身の行動だ。
その手に持っていたのは日本で生まれ育った人間なら避けては通れない、誰でも必ず一度は見たことのある書物だった。
彼はぶつぶつ言いながら、確認するように薄いページをめくっている。
「よめ、よめ……とは、息子の妻として他の家から嫁いできた女性……? そうだったのか、なんたる失態!」
人外が国語辞典を引いている。
確かに厳密に言えばそうかもしれないが。違う、私が今気になっているのはそこじゃない。
そう言われて脳内に浮かぶのは、頭が三つに割れた犬のケルベロスだけだった。
昔ファンタジーゲームばかりしていた影響だろうか。
混乱していると、閻火と名乗った彼は徐に首を捻り出した。
「もらい受けに、は少し古かったか? 攫いに……は誘拐と間違えられそうだしな、ここは西洋語でスウィートハニー、カモンマイホーム、とでも言った方がよかったか」
自問自答するように独り言を並べる彼を見上げる。
私にとってはなにもかもが理解不能だ。
「あ、あの……もらい受けに、とか、スウィートハニー、とか、どういうことでしょうか?」
聞きたいことは山ほどあるけれど、とりあえず一番気になっている質問を投げかけてみた。
無意識のうちに敬語になってしまう。
すると彼はなぜか少し不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「まどろっこしいことは好かん、とりあえず嫁に来い」
奇天烈な言語が鼓膜に吹きつける。
この時の私の目は文字通り点になっていたに違いない。
「……はい? あの……もう一度言ってもらっていいですか?」
「なんだ? まさか間違っていたか!?」
急に焦り始めた彼は組んでいた腕を解くと、胸の位置で手のひらを広げる。
するとその右手の上に、分厚いハードカバーの本が現れた。
なにもない空間から突然物体が出現し、再び目を疑う。
さらに信じ難いのが、彼自身の行動だ。
その手に持っていたのは日本で生まれ育った人間なら避けては通れない、誰でも必ず一度は見たことのある書物だった。
彼はぶつぶつ言いながら、確認するように薄いページをめくっている。
「よめ、よめ……とは、息子の妻として他の家から嫁いできた女性……? そうだったのか、なんたる失態!」
人外が国語辞典を引いている。
確かに厳密に言えばそうかもしれないが。違う、私が今気になっているのはそこじゃない。
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