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3.夢の戯れ
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麦わら帽子を取り、もたもたと前ボタンを外すと、脱いだワンピースと一緒に砂浜に置いたトートバッグに入れた。
正直に言うと、海斗に水着姿を見られるのは嫌だった。
食が細い私の身体は、お世辞にも男性が好むものとは言えない。
しかも水泳と無縁だったため、親がとりあえず、と買ってくれた学校指定の濃紺のスクール水着しか持っていなかった。
気分だけでも楽しみたいと実家から運んで来たはよかったけれど、本当はもっと可愛らしいものを着たかった。
こんな自分が海斗と並んでいいものか。
恥ずかしさと気まずさで下を向きながら、ビーチサンダルを履いた両足の親指同士を擦り合わせた。
「……あ、あの、やっぱり、変?」
痛いほど視線を感じながら海斗を上目遣いに見上げると、何やら放心状態だった彼は私の問いかけでようやく我に返ったようだった。
「本当はもっと、ちゃんとお洒落なやつ用意したかったんだけど、今これしかなくて」
「……いや、いやいやいや、全然変じゃない、っていうか可愛い!」
「で、でも、スクール水着だよ?」
「スクールだろうがヘクタールだろうが可愛い、そしてちょっとエロい!」
純度百パーセントの笑顔でそんなことを言う海斗に、先ほどまでの不安が綺麗に吹き飛ばされてしまう。
「う、海斗は、変わってる、こんな貧相な身体……」
「好きな子の薄着見たら男はみんなそう思うんだって」
きょとんとすると、言った本人の海斗まで同じような表情をしている。
数秒丸めた目で見つめ合ったのち、海斗は褐色の肌でもわかるほどみるみるうちに赤くなった。
「あ……アァア今のは違っ……わないけどでもタイミングが、おかしすぎるからその、また、後日!」
海斗はわたわた、と音が聞こえて来そうなほど両手を顔の前に出して慌てていた。
正直に言うと、海斗に水着姿を見られるのは嫌だった。
食が細い私の身体は、お世辞にも男性が好むものとは言えない。
しかも水泳と無縁だったため、親がとりあえず、と買ってくれた学校指定の濃紺のスクール水着しか持っていなかった。
気分だけでも楽しみたいと実家から運んで来たはよかったけれど、本当はもっと可愛らしいものを着たかった。
こんな自分が海斗と並んでいいものか。
恥ずかしさと気まずさで下を向きながら、ビーチサンダルを履いた両足の親指同士を擦り合わせた。
「……あ、あの、やっぱり、変?」
痛いほど視線を感じながら海斗を上目遣いに見上げると、何やら放心状態だった彼は私の問いかけでようやく我に返ったようだった。
「本当はもっと、ちゃんとお洒落なやつ用意したかったんだけど、今これしかなくて」
「……いや、いやいやいや、全然変じゃない、っていうか可愛い!」
「で、でも、スクール水着だよ?」
「スクールだろうがヘクタールだろうが可愛い、そしてちょっとエロい!」
純度百パーセントの笑顔でそんなことを言う海斗に、先ほどまでの不安が綺麗に吹き飛ばされてしまう。
「う、海斗は、変わってる、こんな貧相な身体……」
「好きな子の薄着見たら男はみんなそう思うんだって」
きょとんとすると、言った本人の海斗まで同じような表情をしている。
数秒丸めた目で見つめ合ったのち、海斗は褐色の肌でもわかるほどみるみるうちに赤くなった。
「あ……アァア今のは違っ……わないけどでもタイミングが、おかしすぎるからその、また、後日!」
海斗はわたわた、と音が聞こえて来そうなほど両手を顔の前に出して慌てていた。
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