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3.夢の戯れ
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七月七日、織姫と彦星が天の川を渡り一年に一度だけ会える日。
この天の川が、私にとっては海のような気がしていた。
お姉ちゃんと理人は、朝八時に家を出た。
何食わぬ顔で二人を見送ると、前日までに密かに準備しておいたお出かけセットを詰めたトートバッグを、クローゼットの奥から引っ張り出した。
躊躇いを捨てさせるように燦々と照りつける太陽。私は水着の上からネイビーに、白い水玉模様のワンピースを着て、頭に麦わら帽子をかぶると海に向かった。
徒歩圏内にこんなに美しい海がある贅沢を感じながら、八時過ぎに着いた頃にはすでに一つの人影ができていた。
筆で描いたような細く白い雲に彩られる青い空。沖縄の晴天に賛美されるように白い砂浜に立った少年は、湿気のない澄んだ空気を纏いながら振り向いた。
「おはよう、ひな」
私を視界に捉えた海斗の笑顔は、明け方の海のように瞬く間に胸を攫ってゆく。
それは潮が満ち一気に引いていく際の、あの清々しいまでの強引さに似ていた。
海斗は藍色に白や水色のハマユリが描かれた、膝上丈のサーフパンツを身につけていた。
ふと、ハマユリの花言葉が「飾らぬ美」だったことを思い出せば、やけに彼に似合うはずだと納得した。
二人きりの朝の浜辺で、海斗は健康的かつ均整の取れた肉体を惜しみなく披露し、私に歩み寄った。
海斗の可愛さは女性らしさの類ではなく、あくまで男性としての成長過程のあどけなさと甘い顔立ちにあった。
彼のこんな無防備な姿を見ることができただけで、沖縄に来てよかったと心から思った。
「ひな、大丈夫? ボーッとしてるけど」
「あ、だ、大丈夫!」
この近さが、海斗の固定距離なのだろうか?
何気なく顔を覗き込まれるだけで、心臓がひどく騒がしくなる。
この天の川が、私にとっては海のような気がしていた。
お姉ちゃんと理人は、朝八時に家を出た。
何食わぬ顔で二人を見送ると、前日までに密かに準備しておいたお出かけセットを詰めたトートバッグを、クローゼットの奥から引っ張り出した。
躊躇いを捨てさせるように燦々と照りつける太陽。私は水着の上からネイビーに、白い水玉模様のワンピースを着て、頭に麦わら帽子をかぶると海に向かった。
徒歩圏内にこんなに美しい海がある贅沢を感じながら、八時過ぎに着いた頃にはすでに一つの人影ができていた。
筆で描いたような細く白い雲に彩られる青い空。沖縄の晴天に賛美されるように白い砂浜に立った少年は、湿気のない澄んだ空気を纏いながら振り向いた。
「おはよう、ひな」
私を視界に捉えた海斗の笑顔は、明け方の海のように瞬く間に胸を攫ってゆく。
それは潮が満ち一気に引いていく際の、あの清々しいまでの強引さに似ていた。
海斗は藍色に白や水色のハマユリが描かれた、膝上丈のサーフパンツを身につけていた。
ふと、ハマユリの花言葉が「飾らぬ美」だったことを思い出せば、やけに彼に似合うはずだと納得した。
二人きりの朝の浜辺で、海斗は健康的かつ均整の取れた肉体を惜しみなく披露し、私に歩み寄った。
海斗の可愛さは女性らしさの類ではなく、あくまで男性としての成長過程のあどけなさと甘い顔立ちにあった。
彼のこんな無防備な姿を見ることができただけで、沖縄に来てよかったと心から思った。
「ひな、大丈夫? ボーッとしてるけど」
「あ、だ、大丈夫!」
この近さが、海斗の固定距離なのだろうか?
何気なく顔を覗き込まれるだけで、心臓がひどく騒がしくなる。
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