君と命の呼吸

碧野葉菜

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2.手を伸ばせば壊れてしまう。

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 どうか発作が起きませんようにと願いを込め、意識して息を整えた。

「あ、わざわざ、戻って来て、くれたの」
「うん。でも、ひなも俺を見つけたから出て来てくれたんじゃねえの? その格好」

 海斗に言われ、部屋着のくったりとしたワンピース姿だったことを思い出した私は「あっ」と小さく声を漏らした。

「た、たまたま、部屋から見えて、それで」
「家って、ここ?」
「うん、そう」
「そっか、俺の学校あっちに五、六分歩いたとこで、ここ帰り道だからよく通るんだ」

 それを聞き、今日カーテンを閉めるのが遅れたことに感謝した。
 窓から外を見ていなければ、一歩踏み出すきっかけを得られなかっただろう。

「追いかけるか、声かけてくれたらよかったのに」

 海斗の何気ない言葉が、ちくりと棘を残す。
 追いつくために速く走りたかった。大声を出して呼びたかった。肺への負担を気にしなくていいなら。

「そう、だね? でも、もしかしたら、私のこと覚えてないかもしれないって、思って」
「そんなわけねえじゃん! あれだけ離れてても、ひなはすげえ目立ってたっていうか、なんかこう、キラキラしてたし……とにかく忘れるとか絶対ないから!」

 真っ直ぐに見据えながらそう言う海斗は真剣で、その輝きの無自覚さに目眩が起きそうだった。
 忘れられていなかった。
 同じ記憶を共有していると思うと、飛び跳ねて走り回りたい気分だった。

「その、ピアス……学校で叱られないの?」
「怒られる」
「お、怒られるのに、大丈夫なの?」
「前に取り上げられそうになったから、近くの木に登ったら先生の方があきらめてた」
「木……?」
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