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1.海、みたいな人
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魚を持っていない方の手指で下瞼を押し下げ、大きく舌を出して見せる海斗に、理人は顔を引き攣らせた。
子供っぽい……つい数ヶ月前まで中学生だったことを考えれば年相応かもしれない海斗の反撃に、思わず和んでしまいそうな自分を諫めた。
「そうだよね、ごめ」
「行くぞ陽波、こんな低脳といたらバカが移る!」
非礼を詫びる前に理人に手首を掴まれ、ぐいぐい引っ張られてしまう。
話せて楽しかった。
もっと、たくさん、聞きたいことがあったのに。
「ひーーーなーーー!」
名残惜しい思いで理人に連れて行かれる私の背後から、雲を蹴散らす爽やかな声が響いた。
距離が開いてゆく中、顔だけを必死に海斗へ向けた。
「俺、大体この時間はここにいるから、またなーーー!」
海斗はメガホンの代わりにしていた掌を、空に掲げて元気よく振ってくれた。
驚きと喜びのあまり上手く笑えず、理人に気づかれないよう静かに手を振るのが精一杯だった。
理人がようやく足を止めたのは、海から離れた民家がぽつぽつ見える場所だった。
その道路脇に停められた白の車から降りて来た人物の元に、歩み寄る。
栗色に染められた真っ直ぐのロングヘアーを、後頭部で一つに結った背の高い女性。
十人いれば十人とも「美人」だと口を揃えて言うだろう、カジュアルなTシャツとパンツ姿も様になっているのは私のお姉ちゃんだ。
私がこの辺りを散歩したいと言ったのを理人が付き添うことになり、お姉ちゃんが迎えに来てくれることになっていた。
私は、一人では何もできない。
今だって、少し早足で歩いたくらいで胸の奥がきしきし痛み、上手に空気を取り入れることができず、ちゃんと息をすることもままならない。
こんな周りに迷惑ばかりかけている欠陥品が、何かを望んではいけない。
子供っぽい……つい数ヶ月前まで中学生だったことを考えれば年相応かもしれない海斗の反撃に、思わず和んでしまいそうな自分を諫めた。
「そうだよね、ごめ」
「行くぞ陽波、こんな低脳といたらバカが移る!」
非礼を詫びる前に理人に手首を掴まれ、ぐいぐい引っ張られてしまう。
話せて楽しかった。
もっと、たくさん、聞きたいことがあったのに。
「ひーーーなーーー!」
名残惜しい思いで理人に連れて行かれる私の背後から、雲を蹴散らす爽やかな声が響いた。
距離が開いてゆく中、顔だけを必死に海斗へ向けた。
「俺、大体この時間はここにいるから、またなーーー!」
海斗はメガホンの代わりにしていた掌を、空に掲げて元気よく振ってくれた。
驚きと喜びのあまり上手く笑えず、理人に気づかれないよう静かに手を振るのが精一杯だった。
理人がようやく足を止めたのは、海から離れた民家がぽつぽつ見える場所だった。
その道路脇に停められた白の車から降りて来た人物の元に、歩み寄る。
栗色に染められた真っ直ぐのロングヘアーを、後頭部で一つに結った背の高い女性。
十人いれば十人とも「美人」だと口を揃えて言うだろう、カジュアルなTシャツとパンツ姿も様になっているのは私のお姉ちゃんだ。
私がこの辺りを散歩したいと言ったのを理人が付き添うことになり、お姉ちゃんが迎えに来てくれることになっていた。
私は、一人では何もできない。
今だって、少し早足で歩いたくらいで胸の奥がきしきし痛み、上手に空気を取り入れることができず、ちゃんと息をすることもままならない。
こんな周りに迷惑ばかりかけている欠陥品が、何かを望んではいけない。
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