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1.海、みたいな人
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「笑った顔、可愛い」
「――え……」
「おお、今度は赤くなった、その顔も可愛いな!」
お世辞に決まっている。
そんなことわかっているはずなのに、みるみるうちに体温が上昇してしまう。
海斗が笑う度、左右の奥にある八重歯が覗いて、その愛嬌がまたどんどんと音を立て、胸をノックしてくるようだった。
そうか、海斗は海だ。
泳ぐことが許されない私に、見たこともない神様から贈られた奇跡かもしれない。
そんな酔狂な考えが脳裏をよぎった頃、背後の売店のドアが勢いよく開かれた。
「ったく、田舎者はなんでこうも無駄話が好きなんだ」
理人が片手に半透明の青い瓶を二本持って、売店から出て来た。
どうやら店員の話に付き合わされていたらしい。不服そうな顔をしていた理人は、こちらに視線を向けるや否や、優しげな垂れ目を全開にした。
理人の手からラムネが落ちて、コンクリートの地面にぶつかった。
「おいお前、陽波に何してるんだ!?」
「何って」
「陽波もなんでも受け取るんじゃない! そんなもの、魚臭くなるし服が汚れるだろ!」
血相を変えた理人が私から魚を取り上げると、海斗の胸に押しつけ返す。
「漁師は魚だけじゃなく女も釣るのが仕事なのか!」
あまりの言い草に、理人を見たまま動けなくなってしまう。
本当はやめて、と言いたかったのに、自由に機能しない口がもどかしく情けなかった。
そんな中、重い沈黙を破ったのは海斗だった。
「あんた、魚食ったことある?」
「……は?」
「さーかーなーを、食ったことあるかって聞いてんだ」
「何言ってるんだ、あるに決まってるだろう」
「スーパーに並んだ魚、店で出てくる魚、あんたが食ってる魚、ぜーんぶ俺たち漁師が捕ったやつなんだぜ、漁師をバカにする奴は魚食うんじゃねえ、べーだ!」
「――え……」
「おお、今度は赤くなった、その顔も可愛いな!」
お世辞に決まっている。
そんなことわかっているはずなのに、みるみるうちに体温が上昇してしまう。
海斗が笑う度、左右の奥にある八重歯が覗いて、その愛嬌がまたどんどんと音を立て、胸をノックしてくるようだった。
そうか、海斗は海だ。
泳ぐことが許されない私に、見たこともない神様から贈られた奇跡かもしれない。
そんな酔狂な考えが脳裏をよぎった頃、背後の売店のドアが勢いよく開かれた。
「ったく、田舎者はなんでこうも無駄話が好きなんだ」
理人が片手に半透明の青い瓶を二本持って、売店から出て来た。
どうやら店員の話に付き合わされていたらしい。不服そうな顔をしていた理人は、こちらに視線を向けるや否や、優しげな垂れ目を全開にした。
理人の手からラムネが落ちて、コンクリートの地面にぶつかった。
「おいお前、陽波に何してるんだ!?」
「何って」
「陽波もなんでも受け取るんじゃない! そんなもの、魚臭くなるし服が汚れるだろ!」
血相を変えた理人が私から魚を取り上げると、海斗の胸に押しつけ返す。
「漁師は魚だけじゃなく女も釣るのが仕事なのか!」
あまりの言い草に、理人を見たまま動けなくなってしまう。
本当はやめて、と言いたかったのに、自由に機能しない口がもどかしく情けなかった。
そんな中、重い沈黙を破ったのは海斗だった。
「あんた、魚食ったことある?」
「……は?」
「さーかーなーを、食ったことあるかって聞いてんだ」
「何言ってるんだ、あるに決まってるだろう」
「スーパーに並んだ魚、店で出てくる魚、あんたが食ってる魚、ぜーんぶ俺たち漁師が捕ったやつなんだぜ、漁師をバカにする奴は魚食うんじゃねえ、べーだ!」
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